453話(2004年12月03日 ON AIR)
「時子さんと僕」
作/樋口美友喜
ゲスト出演/中田あかね(トランスパンダ)
 
  ピピ、ピピピ、ピピピピ
電子音の目覚まし時計、カチリと止めて僕は目を覚ます
あ…
  布団をめくってため息ひとつ
しまったぁ…
  ドンドンと、時子さんがドアを叩いて叫ぶ
時子 おはよー、モーニン、起きてよ。遅刻するって。寝てる?起きてる?開けるよ。
  カチャリと僕はドアを開けて
時子 おう、起きてんじゃない。
時子さん。
時子 ん?何?
しまった、しまった君です…
時子 あいや、やっちゃった!?
冬の寒い朝のせいです。
時子 だから昨日の夜寝る前にトイレ行けつったでしょうが。
それは関係ありません。
時子 何でさ。
ちょっと夢の中で僕は思考の海におぼれていまして、
時子 なーにフルチンでわけ分からないこと言っての。
見ないでください。
時子 恥かしがってんじゃないわよ。やっだ、時間ないし、それ、洗濯機につっこんで。
しまった、しまった君です。
時子 やめなってその合言葉みたいなやつ。
おばあちゃまとの共通語で。
時子 誤魔化さない。それおねしょ。おねしょよ、おねしょ。小6で、おねしょ。
連発しないでくださいよ。悩みのタネで頭が痛いんです。
時子 だから寝る前にトイレいきゃいいって。
子供扱いしないでいただきたい。
時子 分かった。しまったしまったって言えば、全部おばあちゃまが片付けてくれてたんだ!?
うっ。
時子 自分で片付ける。当たり前よ。おばあちゃまが甘やかすからいまだにおねしょなんかすんのよ。あたしは甘くないから。
おばあちゃまのことを悪く言わないでください。
時子 だからパンツはいて。
見ないで。
時子 時間ないんだから、ほんとに。朝ごはんテーブルの上。あ、納豆食べれる?
  僕はパンツとズボンをはきはき
うんっと、よいしょっと、納豆は、食べれるじゃないです。れる、られる。ちゃんと日本語使ってください。食べられる、ですから。
時子 はいはい。
まったく。外でそんな話し方すると笑われますよ。
時子 あんた学校で笑われてない?大丈夫?
僕がしっかりしないと。
時子 おねしょなおしてから言えっての。
言葉使い悪いですよ。
時子 これから気をつけますわ。あんた、誰に似たんだろうね。
時子さん、時子さん、これこそがまさに反面教師というやつですよ。
時子 今度の休みに眼鏡屋連れてったげる。
は?
時子 分かった。そのメガネのせいよ。コンタクトにしたら…うん、やっぱりあたしに似てるじゃない。
か、顔のことですか?
時子 他に何があんの?
き、教養のことかと。
時子 ばっかねぇ、あんた。あたし頭いいんだから。
初耳です。
時子 教えてあげるわよ、これから長いんだし。
これから…
時子 やだ、ほんと、マジで。行ってくる。あんたも、遅刻すんじゃないわよ。
そんな失態…
時子 ねぇ。
何でしょう、時子さん。
時子 8時までには帰るから。
ご心配なく。
時子 ねぇ。
何でしょう、時子さん。
時子 あんた、やっぱりおばあちゃまとこのほうが良かった?
  僕、ちょっと考えて、恥かしくて小声になった
まぁ、悪くないですよ。時子さんと二人だけの生活も。
  時子さんは少し笑って
時子 そ。
時子さんには僕くらいしっかり者がいないと、駄目でしょ。
時子 ふふん、ガキ。
お口が悪いですよ。
時子 行ってきます。
いってらっしゃいませ。
  僕は時子さんが嫌いじゃない


おしまい
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