456話(2004年12月24日 ON AIR)
「ポジティブ・ シンキング」
作/大正まろん
ゲスト出演/亀岡寿行(桃園会)
 
いいんだよ。死を選ぶ事は恥ではない。
え?
あなたの放つそのイカ墨スパゲッティのような真っ暗なオーラ、間違いない。
暗いですか?
借金?リストラ?それとも彼氏に振られた?
まあ・・・。
まあ、って?どれ?どれが正解?
おじさんは、ここで何してるの?
男  ハハハ、私、おじさんかな。
じゃあ、お兄さんでもいいや、何してるの?
・・・待ち合わせ。
誰を待ってるの?
誰かな。
待ってる人が誰かわからないの?
そうだよ。
誰を待ってるのかわからずに、待ってるなんて変なの。
大丈夫、ヒミツの合言葉があるからわかるんだ。
スパイじゃあるまいし、
私の事はいいんだ、どうぞ続けて。
何を?
クリスマスの夜、橋の上で、一人川面を覗き込んでる淋しげな女がいる。やらかす事は決まってるでしょ。ね、どうぞ引き止めたりしませんから、思い切ってドボーンと。そうだね、この高さだから頭から行くと確実だよ。
あの、私、やっぱりやめます。
ええ?でもさっき、くつ脱いで欄干に上ろうとしてたでしょ。
確かにそのつもりでしたけど。
生きていても辛くて苦しいことばかりだよ。そりゃあ死にたくもなりますよ。
そんなに親身になっていただいてすみません。
いや、成績稼がないとね。
成績?
いえ、別に。
おっしゃる通り、苦しいことばっかりじゃないですよね、きっと。
苦しいことばっかりだって言ったんだけど。
そうよ、今まで辛い事たくさんあったけど、幸せな事もありましたから。私、もっとカッコいい彼氏見つけます。仕事だって、もっと自分に合った業種を選べばいいんです。
いやいやそんな前向きにならないでいいから。
心配してくれてるんでしょ。
まさか。
って言うか、私より寂しそう。
私が?
ええ。とても切羽詰った感じがする。
いや、まあねぇ結構切羽詰まってるけど。
ひょっとしてお兄さん死ぬ、
いや、違う、決して私は死神なんかじゃありませんから。
死神?
ああ、ええと、死にたがりじゃありません、と言ったんです。
そうかわかった。お兄さんは、あれだ。
はい?
ジサツの名所とかに立ってる看板みたいな事をやってんのね。
看板・・・「ちょっと待て、死んで花実が咲くものか」みたいなやつ?
そうそれ。そっか、だから待ち人が誰かわからないんだ。
当たらずとも遠からずかな。
ありがとう。
感謝なんてやめてくれ。ジンマシンがでるじゃないか。
もう、照れ屋さん!私、本当に嬉しいの。何人も通り過ぎてく人がいて、何台も走ってく車があったけど、お兄さんだけが心配そうに私に話しかけてくれた。
なかなか決心がつかないみたいだったからね。
私、今夜はお兄さんと一緒にここで張り込みしようかな。
邪魔なんだよ。
え・・・。
死ぬ気がないならとっとと帰れよ。半端な気持ちで死ぬ気なんか起こすな、こっちは迷惑なんだよ。
はい、本当にすみませんでした。
あ、でもマジで死にたくなったらまたここへ来てね。
ふふふ、やっぱり優しいんだ。それじゃあ・・・もう二度と来ません、ありがとう。お元気で。
  女は背筋を伸ばし、去っていく。
あーあ、またしくじっちまった・・・。ま、死にたがってる奴はあいつだけじゃない。頑張れ、オレ。ファイト、オレ、チャチャチャ、ファイト、チャチャチャ。ファックション(くしゃみ)チクショウ。寒いぜ。


終わってまた始まる
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