46話(1997年2月14日 ON AIR)

「春はすぐそこ」

作・水こし 町子
お花屋さんの店の中
もう春の花でいっぱい
おひなさまのももの花も
菜の花も  
桜草も
名前の知らない花も
この二月は寒いけれど
かならずもう少しで春がきますよってね
女の子は花屋さんを
そうして見ているんだね
冬中部屋の中に入れていた
カポックやおりずるらん
花のおわった葉だけの鉢
そうそうしあわせの木も
去年からまだ咲き続けている  
真っ白な胡蝶蘭
クリスマスのツリーなった
ゴールド・クレスト
わたしのお友達なの
あのね
木にも花にもひとつずつの
妖精が住んでいるんだって
かわいいわねえって
賞めるとその木の命その花の命が
ながくなるそうよ
ぼくは海べりで風に押されて
曲がりながらも
何十年もがんばっている
松の太い幹なんか見ると
すごいなあって
声に出してしまう
須磨の天神さんにも
大きないちょうの木があった
樹齢何百年なんて木なんかもう
自分が小さい小さいって
なにかに悩んでいても
悩んでいることがおかしくなってしまう
そうね
生きているということになにか
意味を見つけたいと
私はいつも考えているのに
木はじっとおなじ場所で何百年も
春も夏も秋も冬も
どうしてここに立っているんだろう
なんていちいち考えているわけじゃあ
ないのよね
考えていたらどうする?
あなたが本当はどう生きていきたいのか
まだ聞いていない
うーんむつかしい
今は君とこれから助け合って
生きていけたら
いやなことでも
乗り越えられそうな気がする
結婚するのは恋愛している時と
また違って大変みたいだけれど
二人がしっかりしていれば     
いいと思うよ
ありがとう
私もがんばれそう
自然に  
今のままのあなたと今のままの私が
温室ではなくて
夜になると  
そんなに暖かくない
私の部屋の中なのに
小さな芽をだしている
シンビジュウムのように
ゆっくりゆっくり
生きていけたら
うれしいな
須磨の海にある松の木
何本あるのだろう
一度数えてみたいね
数えた松がたぶん
ぼくたちが
二十年たっても
三十年たっても
おなじだけの数の松の木が
少し幹が太くなったくらいで
海にむかってたっているんだ
やっぱりすごいなあ
やっぱりすごいよ
モーニングカップ二つと
スープ皿二枚  
花柄のテーブルクロスに
あなたの好きなラーメン鉢二つ
湯呑みも茶わんも二つそろったのは
大きさが違うのよね
あれはいや   
なんだか昔の
ご主人さまって感じしない?
私たちはおなじ大きさにしましょう
ああそれから部屋にたくさんの  
植木鉢おいてもいい?
何年も育ててきた植木たちも一緒に
緑色の鳥も飼いたいな
ああ白い猫も 
できたら耳のながい犬も
でもずっと後でいいわ
ぼくは
君と仲良く毎日暮らしていけたら
今はなにも思いつかないよ 
春よ早く来いだね