465話(2005年2月25日 ON AIR)
「妻、感じる。」
作/ごまのはえ
 
  朝食の風景。テレビの音がする。
夫は納豆をかき混ぜている。
妻はぼんやりそれを見ている。
私さ、最近思うねん。
ん?
はじめてあんたと会ったとき、途中で雨降ってきたやん。それで帰り際、あんた「まともな男はかさなど持たない」って地下鉄の駅まで走っていったやん。
へ?
あれ、なんやったん?
  沈黙
え?
あんたジャケットで雨をよけながらさ人ごみの中走っていったやん。あれ何?
なにって?
私それ見てこの人かっこいいって思ってん。あれは何?
…マヨネーズ、とって。
納豆にマヨネーズやめて。
だって…。
  沈黙
で、五年たってさ。一緒に家具見に行ったとき、私が店員さんと話してたらあんた泣いてる男の子にガムあげてたやん。
へー。
で、頭なでてさ、男の子泣き止んで。そーゆうことすごく自然にしてたやん。それ見て私、「あ、このひとにしてよかった」ってすっごい思ってん。
ほう。
あれは、なに?
お、今日テレビ細木数子あるぞ。
細木数子はやめて。
…だって。
  沈黙
あれから五年なんですけど。
は?
もう五年たってるの!
…なにが言いたいの?
私には五年に一回あんたが柴田恭平みたいに見えるの!私はそれがすっごい好きなの!それがないと続かないの!
そんなこと言われたって。
やってよ。柴田恭平やって!
なんで朝からそんなことしなあかんねん。
やって!
会社遅れるやろ。
どうでもいいやんあんな会社。
そういうこというな。
いざってとき会社は何もしてくれへん。
朝からそういうこと言うな。
あんた会社から帰ってきたら私もいないかもよ。
おまえな。
そしたらエッチなビデオいっぱい借りに行くとか言いたいんでしょ。
なんにもいってへんやろ。
やってよ。
できひんって。
なんでできひんのよ。
練習する。
いまやって。
(すごくかっこよく)おいおい、無茶言うなよ。
  妻、感じる。
あ、
(普通に)どうした?
早く会社いって
え?
早く!今すぐ消えて!
え?
余韻を楽しむの!
だって…。
恭平は「だって」とかいわへんの!
…(弱弱しく)おぼえてろよ。


わり
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