477話(2005年5月20日 ON AIR)
マラカスをふる女
作/大正まろん
昨日、出会ってからずっとプー太郎だった彼氏が、書置きすら残さず出て行った・・・。
  女、マラカスをチャッチャッとふりながら、適当に節をつけて歌う。
あなたに預けた生活費(チャッチャッチャッ)、それは私の生活費(チャッチャッチャッ)、給料日まであと十日、残るお金は二千円(チャッチャッチャッ)。お陰でお昼はカップメン(チャッチャッチャッ)、お湯入れ気づいた箸が無い(チャッチャッチャッ)。コンビニ走れば(チャチャ)、段差につまづき捻挫したー。あ~捻挫した~(チャッチャッチャッ)。
ノブコ(何してるんだの意)?
あいつが残してった思い出の品は、コレだけ・・・
なんだそれ。
女  ゴーヤ・マラカス。
ゴーヤ?マラカス?
(チャチャッ)ゴーヤの形したマラカス。沖縄で買ったんだ、二人で。
行ったのか二人で。
ううん、出会ったの沖縄で。
そうか。
何でこんなもんだけ残してったの、私たちは苦い関係でしかなかったって事?
うーん・・・。
で?
何。
お父さんは?
なんだ。
なんで来たの。
お前が呼んでる気がしてさ。
また家出したんだ。
違うって
今度は何が原因?私、母さんに電話するからね。
待て。
待ちません。何で黙って家を出るのよ。残された人がどんだけ心配すると思ってんのよ、身勝手だよ。
ノブコ、母さんは今、出かけてる。
え。
本当にケンカしたとかじゃないから。
そうなんだ。
ま、以心伝心ってやつか。
あいつ・・・おとといまで一緒にテレビ見て笑ってたんだよ。ひどいよ、何が不満だったの?私、騙されてたの?
なんだったのよあたし達の関係って。私はこれからどうしたらいいのよ。
突然消えるにしたって、せめてありがとうとか、サヨウナラぐらい言ってほしいよな。
うん・・・サイテーだよ。
オレをフッてくれ、とか?
はい?
いや、マラカスのメッセージ。
(笑い)もう、そんな「おち」をつけないでよ。
(笑い)お後がよろしいようで、ってか?・・・ま、踏ん張りなさいよ。
踏ん張りたくても、足痛いしさ。
大丈夫大丈夫。
  携帯電話が鳴る。
はいはい、今出ますよー。(電話に出る)もしもし、あ、お母さん、なにもう丁度良かった今お父さんが、え、よく聞こえない、倒れた?うそ、冗談、今ここに居るんだから、お父さん?・・・あれ・・・。
  父の言葉がよみがえる。「お前が呼んでる気がしてさ」・・・。
え、ううん、なんでもない、行く、そっちに行くから、うん、じゃあ。(電話を切る)
  そして、自分を、父を応援するように、マラカスで三三七拍子。
チャッチャッチャッ、チャッチャッチャッ、チャッチャッチャッチャッチャッチャッチャッ。
お父さん・・・踏ん張るよ、私、踏ん張るからね、だから・・・。
  チャッチャッチャッ、チャッチャッチャッ、チャッチャッチャッチャッチャッチャチャ・・・。

終わってまた始まる
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