487話(2005年07月29日 ON AIR)
「ワナ」
作/大正まろん
 
  日曜日の公園。
子供達が砂場やブランコで遊んでいる。どこかで布団を干す音が聞こえる。
隣り合ってベンチに座るマサトとヒトミ。足元には互いの飼っている犬が居る。
ヒトミ (小声で)あのね、できたみたいなの。
マサト できたって・・・?
ヒトミ 赤ちゃん。
マサト え・・・っと、その、マジ?いや、え?
ヒトミ 嬉しく無いの?
マサト 君のご両親に申し訳ないっていうか。
ヒトミ うちの親なんか今は関係ないじゃない。
マサト 関係あるさ。大アリだよ。ヒトミちゃん、親と仲でも悪いの?
ヒトミ ううん、仲良しよ。ママとはいつも一緒にショッピングに行くし。
パパは私の柔道の先生だもん。
マサト じゅっ柔道!お父さん柔道やってるの?
ヒトミ ええ。あたし達、そんな話ちっともしなかったわね。
マサト まいったなぁ。
ヒトミ どうしてよ。
マサト だって、結婚もしてないのに先にヤバイ事になっちゃってさ・・・。
ヒトミ ヤバイってなによ。
マサト 結婚、しなくちゃな。
ヒトミ それって義務なの?
マサト そりゃ当然の義務だろ、義務。男として責任とらなくちゃ。
ヒトミ ・・・犬の結婚なんて聞いたことないけどな。
マサト 犬?
ヒトミ うちのベティと、マサトさんのマッスルの子供ができたの。
マサト え、できたってベティの話?
ヒトミ そう。
マサト そっかそっか、やったじゃないかマッスル!ようやくだよな。
おめでとうベティ。
いやぁ嬉しいな。名前、何にしようかな、何匹生まれるのかな。
ヒトミ ふーん。
マサト ふーんって?
ヒトミ 犬の事なら素直に喜べるんだ。
マサト そりゃあ、マッスルの子供だよ嬉しいさ。・・・
何?ヒトミちゃん嬉しくなさそうだね。
ヒトミ 私も、なんだけど、もういい。
マサト 私も、って?もういいって?
ヒトミ ベティと一緒に元気な子を産むわ。
元気でねマッスル。(と立ち上がり歩き出す)
  クーンと寂しげな声をあげる、マッスル。
マサト ちょっと待てって。追いかけるぞマッスル、
ああもう、誰だよこんなにしっかりベンチにリード結んだの、俺か・・・、
ヒトミちゃん犬は2ヶ月くらいで子供が生まれるんだよ。
ベティと一緒に出産するなんて無理なんだからね。
ヒトミ 義務で結婚させるくらいなら、
ベティを見習って、一人で逞しく産んでみせるわよって言ってんの!
マサト ああ、ヒトミちゃん義務で怒ってんの。
ヒトミ ・・・。
マサト あれは、単なる言葉のアヤ。ボクは男としての責任の話をしてたの。
ヒトミ 責任感も義務感もクソ食らえーだ。
マサトさんにはピュアな愛のカケラすらないのね。
マサト ピュアな愛って、いや、だからヒトミちゃん、待って、ストップ。
  二人の距離は次第に離れて行く。
マサト (大声で)ヒトミちゃーん!・・・君が好きだぁー。カムバック。
ヒトミ (大声で)もう一回言って。
マサト (更に大声で)愛してるヒトミー。
ヒトミ マサトさーん、私もよ。(走って戻ってくる)
マサト ヒトミ。(ヒトミに駆け寄る)
ヒトミ マサトさん!、に一本背負いー。
マサト うわぁっ・・・イテテテテ・・・なんだよ急に。
ヒトミ (笑って)パパに投げられた時の、練習!
マサト (笑って)やっぱ、パパに投げられるかな。
ヒトミ (笑って)愛があれば大丈夫よね?
マサト (笑って)そうだね・・・。

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