500話(2005年10月28日 ON AIR)
「安心して。救いは訪れる」
作/サカイヒロト
ゲスト出演/重実百合(クロムモリブデン)
 
  「しいっ・・静かに。静かに聞いて欲しいんです。なにも怖がることはないんですから」
  「顔を見ても私が誰だか思い出せないでしょう。会った事がないんですから。でも私はあなたを見てました・・ずっとね・・ずっ とです・・」
  見えない、何も
  「だから明かりはつけません。私の声を、音を覚えておいてほしいんです。光は射しません。理想的な暗室です。でも・・不思議 ですね。完全に真っ暗なのに、ずっとここにいるとだんだん、目が慣れてくるんです。信じられますか?見えてくるんですよ・・ 闇が」
  「黙って・・耳をすませて。ほら」
  どこ?
  「大丈夫、【あなたには】危害は加えません。【あなたには】何もするつもりはないんです。ああ・・。でも・・安心して。救いは訪れる。だからあまりもう時間がないんです」
  誰?
  「始めましょうか」
  「・・ずっと考えて・・たんです、どうやったら、あなたが・・私を忘れな・・いでいてくれるだろ・・うって・・どう・・した ら・・いいんだろうって・・」
  「どうし・・たらいい・・んだ・・ろうって・・」
  「とても・・丁寧・・に考え・・たんです・・微分方程式を解くよう・・に・・」
  「・・耳をすませて・・想像・・してください・・」
  「目の前の私を」
  気がつくと、音はなかった。声はなかった。
  沈黙と闇だけがあった。
  それからどれだけの時間が過ぎたのか・・数秒、それとも数時間・・
・・たぶん・・もうすぐ部屋の扉が開かれるのだろう・・
この暗闇に光が射しこむのだろう・・
射しこまなければいいのにと私は願う・・見えないままにしておいてほしいと私は叫ぶ・・
  救いなんて、訪れなければいいのに。
  扉が、開いた。


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