509話(2005年12月30日 ON AIR)
「学校 」

作 / 上田誠

 
 

遠くで、学校のチャイムの音。
教室。鉛筆の音。

男女、小声で話している。

……あれって、ドリルでしたっけ。

ドリルですよ、計算ドリル。

(笑って)計算ドリル。懐かしいですねえ。

あれってなんで縦開きなんですかねえ。

そう、他の教科書は横開きなのに、ドリルだけ、縦なんですよね。

あれ分かんないですよねえ。
あと、算数の教科書って、なんで、青か緑なんですかねえ。

(笑って)そうそう、なんか、教科によってイメージカラーがあって。

ええ。

国語とかって、大体ピンクとか赤なんですよね。

で、社会は、なんか茶色、みたいな。

そうそう。

文系科目は、なんとなく暖色系、みたいな。

(興奮して)あれ、クーピーじゃないです?

どれですか?うわうわ!

あれほら、クーピーですよ!

クーピーまだ使ってるんですねえ!

クーピー、あれなんですよねえ。
肌の色塗るのに、オレンジとか使っちゃって、

そう、どうしても、サイケデリックな色になるんですよ。

肌色つくるのとかすごい難しいんですよねえ。

なんか、白と、オレンジと、茶色を、うまいこと……。

で、筆圧強いと、折れる、みたいな。

ええ、中なんか、空洞になってるんですよね。

(笑って)トッポみたいに。

折れやすい色とかあったりして。

そーそー!

(感慨深げに)クーピー、懐かしいなあ。
(思い出して)あとあれありましたよねえ。アルボース。

アルボース?

あの、手洗うやつ。緑の。

(思い出して)アルボース!

洗剤プラス、消毒液が混じったみたいな。

アルボースって、今どうなってるんですかねえ。

あんまり売ってないんですかねえ。
なんだったらあれ、今でも使いたいですよねえ。

そうだ、私あれ嫌だったんですよ。避難訓練。

避難訓練嫌だったー。あれ一日中ドキドキするでしょう。

ドキドキする。
もう、授業とか上の空でしょう。

で、放送入って、避難するじゃないですか。
で、グラウンドに辿りついたら、最後、校長先生の説教が待ってるんですよ。

(笑って)あれ意味分かんないですよねえ。

(笑って)あれ全然ピンとこないんですよ。
「今日は6分かかりました」とか言われても。
あれってだって集団としてのタイムでしょう。

自分一人じゃがんばりようないんですよねえ。

僕だけど、あれ好きでしたわ。体育のときの、トランポリン。

あー!

体育のときに先生あれ出してくれたら、もうなんか、自由時間みたいになるでしょう。

なる!

もはや体育じゃなくなるでしょう。あの感じがすごい好きだったんですよ。
あと、水泳のときの、チップ拾い。あれもそうなんですけど。

あれもそう、なんかキャッキャしますよねえ。

完全に遊びになるんですよ。あれが大好きなんですよ。

あとね、ずっと思ってたんですけど、ドッジボールってあれ、怖すぎないですか?

あー、はいはい。

男子とか、あれなんで思いっきり投げてくるんですか?

あれは、もう男子を代表して謝りますわ。

あんなのだって、痛いでしょう。

違うんですよ、あのころ多分、なんにも考えてないんですよ。

で、なんか、球やたら速い男子とかいるでしょう。

いやいやあれは、アピールも兼ねてるんですよ。女子への。

あー。

それはだって、ちょっとあったでしょう?

確かに、強い球を男子が受けてくれたら、ちょっとポッとはしましたけど。

ほらほら。(見て)あれそうじゃないですか。あのテレビの下。

ドッジボール。なんでテレビの下にあるんですかねえ。

昔からそうですよねえ。給食早く食べて、ガーッと取りにいくんですよ。
   
先生

はい、それでは、第一問、できた人ー。

 

生徒たち、手を挙げる。

   
おっ、参観日、始まりましたねえ。
ドキドキするー。

親はこういう心境だったんだなー。

 

END



閉じる