520話(2006年3月17日 ON AIR)
「 ビニ傘がない 」

作 /上田 誠

 
 

店員の声「ありがとうございましたー」など。        
コンビニの自動ドアが開く。        
外に出ると、雨が降っている。

(傘立てを物色して)うわ、最悪だよ。

どしたの?
傘盗まれてる。
何、ビニール傘?
ビニ傘。

・・・・・・だけど、こないだそういえばテレビで言ってた。

何を?
なんか、ビニ傘問題、とかいって。
ビニ傘問題?

最近なんかすごい増えてるらしいよ。

あー、こうやって盗まれるのが。

そう。まさにコンビニとかで。

あー。だけどあれだよね、盗むっていうのとは、ちょっと違う感じだよね?

え?

いや、だってさあ、あんまり何ていうか、盗んでる意識、ないじゃん。

あー、まあビニ傘はね。

こうなんか、割ととってもいいもの、みたいな。

うんうん、「誰でも自由に使っていいコーナー」みたいな。

そうそう。さっきのあの傘立てとかね。

あんまりなんか、所有権ないよね。

だからアレだね、オジサンとかだと、ビニ傘とかにもいちいち名前書いてんじゃん。
そういうい世代だと、やっぱ言うのかもね。

・・・・・・(考えて)それってだけど、なんか、弱ってるよね。

弱ってる?

・・・・・・人類、滅亡するよね。

・・・・・・いや、意味分かんないけど。

だってさあ・・・・・・物欲、なくない?

なに、俺たち?

そうそう、上の人たちに比べて。

あー。

んまりこうなんか、不景気とかって、ピンとこなくない?

まあ、(笑って)確かにずっと、ネットばっかりやってるけどなあ。

でしょ?

基本的に、電脳世界にいるけどな。

そう、だから、そうやってだんだん、欲がなくなっていってんじゃん。

あー、なんか所有欲みたいな。

そう、こうなんか、動物としての。
はいはい、こう、一旦人類ゴールしちゃったみたいな。

そうそう。

それでなんかいずれは滅亡、みたいな。
うん。

長えよ。結論まで。途中飛ばしすぎだよ。・・・・・・っていうかお前、何やってんの?

・・・・・・ない。

なに、自転車?

うん。・・・・・・

 

END



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