524話(2006年4月15日 ON AIR)
「 カポエラ 」

作 / 上田誠

 
 

カポエラダンスを見ている男女。
ビリンバウのリズム。(カポエラのBGM)

ほー。
 

ダンサーが踊っている。

最初ゆっくりなんだね。
そうそう。だんだんねえ、これが速くなってくるから。
 

キック。

ほらキック!
おわあ!
  キック。
ほらきた!
うわあ!すごいねえ!これなに、ダンス?
んー、ダンスっていうか、もともとは、格闘技だったんだけど。
こう、看守の目をごまかすために、ダンスっぽくして、
カムフラージュしたっていう。
ほえー。
こうほら、手をね、
  キック。
2人 うわあ!
ほらほら、蹴りばっかでしょう?
あれは、手を当時、縛られてたからで、手が使えなかったために、
こうやって足技が発達したっていう。
ああやって手を封じてるからこそ、
むしろ、蹴りのダイナミズムが引き立つっていうね。(得意げ)
うん。(夢中)
蹴りから、ソウルが伝わってくるっていうね。
 

ダンサーがちょっと手を使った。

今でも、手使ったよ?
(笑って)まあ、そりゃたまには使うこともあるけど。
このね、意外な姿勢から蹴りがグインと出てくる、この感じ。
ね。蹴りだけでこんなにもパターンがあるかっていう。
 

ダンサーがまたもや手を。

(笑って)また手使った。
まあまあ、あくまでも手は補助的なもので。
ほら、蹴りを観ないと。蹴りが本流なんだから。
あー。
蹴りのこの、なんていうの、インパクト?
大きくかき混ぜるように蹴りあげることで、
相手にどんどん、プレッシャーを与えていくっていう。
 

手を使う。

(笑って)まただ。手結構使ってるよ?
……あれ?

手を使う。

ああ、ほらほら。
……おっかしいなあ。
別に手もありなんじゃないの?
いやいや。……ちょっと、なんだろう。こんなハズじゃないけどなあ。
そうなんだ。
 

手をどんどん使う。

2人 ああ。
(切れ気味で)ちょっと、拡大解釈が過ぎるなあ、あの踊り手。
もっと、不自由な感じあったけどなあ。
もうだって、手めちゃめちゃつかってるよ。
 ほらほら、ぶんぶん振り回してるもん。
ちょっと、どうなってんのこれ。
バックボーン、おかしいでしょう。台無し。
カポエラ、もっと不自由なはずでしょう?

ああもう、めちゃめちゃ自由だよ。
手を使って、羽ばたく感じのダンスになってるよ。

……アイデンティティ、守ってほしいけどねえ。
  まあ、自由ではあるけどさあ。

2人 ああ。……あー。……うわー。
 

自在に舞うダンサー。

   
END
 
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