533話(2006年6月17日 ON AIR)
「 いじわるするおじいさん

作 /ごまのはえ

 

深夜である。ここは老夫婦の寝室。先ほどから物音がしている。

(小声で)ちょっと、ちょっと、

(寝ぼけて)うん・・・・もうついたか、

おじいさん、おじいさん。

もうついたか?
なに寝ぼけてますのん。ちょっとおきて、

なんや、今何時や。

泥棒。
え?
泥棒ちゃいます。この音。
  二人は物音を聞く。
どんくさいやっちゃな。こんな家なんにもないぞ。
はぁ、警察。

やめとけ開き直って居座られたらかなん。

でも、
出て行くのまったらええねん。
そんな。
そのうち出ていかはる。
そんな。

ほなどないせいちゅうねん。わしに泥棒とやりあえちゅうんか。

いや、ん、でもこわいわ。

寝たらええねん。いずれ帰りよる。

寝れませんやん。

おやすみ。
  夫は布団をかぶる。物音はなり続けている。
おじいさん。おじいさん!
ねるねる。ねるねるねる。
私、こわいわ。
しゃーないやないか。台風みたいなもんや。がまんせい。
・・・・。なんの夢みてはったん?
は?
さっき、私が起こしたとき「もうついたんか?」って、

・・・・。

それ聞いたら寝ますから。

電車や。お前と一緒に電車のっとるねん。
どこいくの?
わからへん。でも周りは馬ばっかりや。立派なサラブレッドや。一つの車両に二十頭はおる。お前と二人でその馬どもにちくわ食べさすねん。馬どもはうまいうまい言うていっぱい食いよる。メチャクチャ忙しいわけや。そのなかにまつ毛がやたら濃い馬がおってな。
低い声で「そのちくわ何でできてるかしってるか?」って聞くわけや。
おれが「知らん」って答えたら、「そんなことも知らなくてお前たちはこの電車にのったのか」って馬どもは大笑いするわけや。
笑いながら馬どもの腹が破けて、なかからゲートル巻いた兵隊の足がドボ!ドボ!って突き出てくる。そんな夢や。
・・・・。
ほら。もう寝ろ。
わたしどうしたらいいのよ。
はやくねろ。
そんな話きいて眠れるわけないでしょう!
(嬉しそうに)おやすみ。
いじわるでしょ?ほんまは一人で温泉に行く夢でしょ?
さぁどうでしょ。

もぉ、いややぁ。この人いややぁ・・・・。

おわり

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