548話(2006年9月30日 ON AIR)
「 ある主婦の思い出話 」

作 /ごまのはえ

学生時代の話です。
私はこの時間が好きだった。彼のアパートに入る前、アパートの近くのコンビニで彼がコンドームを買うのをまっている時間が好きだった。私はコンビニの前にある公園で一人彼を待っている。

 

駆け寄る足音がして。

「買ってきたよ」

「今日は何を買ったの?」

「コンドームと、アポロチョコレート」

コンドームしか買うものがない時、彼は決まって何かついでに買ってくる。私はその「ついで」に買われたものが好き。チョコとかビールとか。

 

駆け寄る足音がして。

「買ってきたよ」

「今日は何を買ったの」

「コンドームとハンドタオル」

 

駆け寄る音がして。

「買ってきたよ」

「何?」

「コンドームと白玉あんみつ」

 

駆け寄る音がして。

「買ってきたよ」

「何?」

「コンドームとシャーペンのしん」

 

駆け寄る音がして。

「買ってきたよ」

「何?」

「コンドームしか買わなかった」

「・・・そう」

 

かぐや姫「神田川」イン。

別に寂しい気持ちになることはありませんが、その時なんとなく寂しかったです。
私がどうして何も買わなかったか聞くと、

「だって、必要なのはコンドームだけだろ」

どうしたんだろこの人って思いました。そんなところで大人になられても。彼の部屋にいくと就職活動の資料請求の書類に埋もれて、彼の履歴書がありました。そこに張られた写真は私の知らない彼でした。

「お前、ガイダンスでてないんだって?」

「うん」

「どうすんの。就職」

それは大学三回生の冬。コンビニおでんが美味しい季節。色んななんとなくが重なって、彼も遠い思い出です。

おわり
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