566話(2007年2月3日 ON AIR)

「ごめんなさい」

作・上田 誠
校舎裏かどこか。
男と女、話している。
ごめんね、突然、呼び出したりして。
ううん。何、話って。
(思い切って)もし、よかったら、僕と。……付き合ってください!
……ごめんなさい。
……そっか。
気持ちはね、嬉しいんだけど。
ちなみに、なんで?
なんで、っていうか……、私、山口君とは、物理的に無理だから。
え?
ごめんね?
いや、っていうか……物理的に、って、どういうこと?
えっ?
いやその、(笑)フラレたな、ってのは、分かるんだけど。物理的に?
いや、だから、……(逡巡して)言っちゃっていいのかな。
いいよ。聞きたい。
……山口君、あんまりカッコよくないでしょ。背もほら、高くないし。
うんうん。
あと、なんていうか、ちょっと、気持ち悪い、っていうか。……
(笑)ごめんね、ホント。
(笑)いやいや、それはもう、しょうがないし。
だから。
……え?
ごめんなさい。(立ち去ろうとする)
え?
え、だって、確かに、背はね。物理的に低いけど。え、なに、そういうこと?
じゃなくて、物理的に、付き合えないの。
生理的に?
物理的に。
え、だってだって、物理的っていうのは、
例えば、僕が地球の裏側にいて、どうやっても会えない、とか、
うん。
ね。あと、もうすでに僕が死んでる、とか、
それだったら、物理的に、ってことだと思うんだけど。
だから、それぐらい、無理なのよ。
いやだから、そういうことだよねえ。それぐらい、無理ってだけで、
ホントに物理的に無理、ってことじゃないよねえ。
(イラッとして)ええ?
いや、ごめんね。もう、付き合ってほしい、とかってことではなくて、
ただ、言葉の問題ね。
(笑)だって、物理的に付き合えない、ってのは、おかしいでしょう。
おかしくないよー。
だって、付き合えるもん、物理的には。生理的には、無理かもしれないけど。
(怒って)だからー。
(笑)ごめんね、こういうとこが気持ち悪いとこなんだろうな、とは思うんだけど。
ホンットに、物理的に、無理なの。不可能なの。
だから、不可能ってのは、それ、言葉おかしいでしょう。
論理的に、もう、ありえないことなのよ。
いや、だから、論理的にはありえるけど、気持ち悪いってだけで、
じゃなくて、ありえないの。定義上、それは、ないことになってんの。
(笑)何、メチャメチャ嫌われてるってこと?
宇宙定数に反してるのよ。ホンット、ごめんなさい。
END