569話(2007年2月24日 ON AIR)
「 災害時のお金 」

作 /ごまのはえ

「ものすごくがんばって僕たちは7千万円の貯金ができた。」

男と女

「ばんざーい!」

「と、喜んだのもつかの間。うちの町内に隕石がおちた。」

   
 

家が崩壊する音。

   

「僕らは閉じ込められた。」

   

ケケケケ。

やめて、

ケケケケケケ、

もうやめてよ。今そんなんみてる場合じゃないでしょ。

なんでやねん。

あんた状況わかってるの?通帳こっちかして。しまっとくから。

7千万やぞ。見てみろこのゼロの数。

今、そんなのみてもしゃーないやろ!

大丈夫、心配するな。俺らには7千万ある。

(ため息)

7千万あれば絶対助かるって。

お金ってなに?

は?

何よお金って!こんな時全然役にたたへん。何お金って、それで助かるの?
外と連絡取れるの?食べれるの?ただの数字やん。紙やん。しかも貯金やし。
全然意味ないやん!

落ち着け。

今この状況では、そんな通帳全然意味ないねんで?

意味がないこともないとは、言えないぞ。

あんた頭悪なったなー。

まぁ俺の話を聞いてくれ。お金なんて、もともとそういうもんや。食べるものでもない。
服でもない。爪もきれへん。何の役にもたたない。ただ皆が価値があると信じてるから価値があるだけ。いわば共同幻想、人間の頭脳が作り出したもの。そして今の我々は、食べ物もない、外との連絡もとれない、ただ助けてもらうのを待つばかり、ただ、
お金だけはある。

そんなお金意味がないねん。

悲観的になるな。言ったやろ。金なんて最初っからそんなもん。頭のお遊び。
そこで我々はお金本来の意味に立ち返り、お金をつかって遊ぼうじゃないか。

はぁ?

会社の近くにトンカツ屋があってさ。そこのトンカツが美味そうなのよ。でも千二百円もするわけ。でも俺ら金持ちやん。毎日でも食えるわけよ。

アホ。

毎日食べたとして一ヶ月で、3万6千円。一年で43万2千円。俺らの7千万はびくともしないわけよ。

(ため息)

な、こーゆうこと考えたら、楽しいやろ。

   
 

   

あんた。それ一人で食べるつもり?

え?

それ一人で食べる計算やんな?

あ、

サイテーやなあんた。あんた一人で稼いだ7千万ちゃうねんで。

ごめん。

だいたい毎日トンカツなんか胸焼けするわ。週一でいいの。それより河豚でしょ。

えーあんなん食べた気せーへんわ。

だから、おなかいっぱい食べるのよ。河豚で腹いっぱい。そんな経験できひんで。

ちょっとまてせっかくの7千万なんやから大事につかおう。

チーズフォンデュ。

そのほうが胸焼けするわ。

違うってチョコレートつけるやつとか、フルーツつけるやつとか色々あるねん。

まぁまぁ候補としておいとこ。

ブリしゃぶ。

え?なにそれ?

新鮮なブリをしゃぶしゃぶにするねん。

美味そう!

通販でセット売ってるから、3万円ぐらい。

たか!

何言ってるのそれを週に一回食べたとしても一ヶ月12万でしょ、一年で140万ちょっと、私らの7千万はびくともせーへんて。

男と女

ケケケケケ

おわり
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