589話(2007年7月14日 ON AIR)

「応仁の乱」

作・ごまのはえ
職場で新入社員の挨拶。
(少し緊張気味に)風間翠です。よろしくお願いします。
職場は拍手に包まれる。
男N
「新入社員の風間くんとは帰りが同じ電車になる。その中で彼女が僕にした相談は…」
電車の中。
「西山先輩となかなか打ち解けられなくて…。」
男N
「しまったーと僕は思った。同じ課の西山千夏は僕と同期で僕とは一番仲がいい。僕はただの仲良しのつもりだったけど千夏ちゃんの方ではそうは思ってなかったのかもしれない。それで僕が風間くんと一緒に帰るようになったから、風間くんに辛くあたるのかも。これは大変だ!」
電車の中。
職場。
男N
「そんなこんなで悩んでいたら、同じ課にいる弓井先輩が見慣れないマニキュアをつけていた。エメラルドグリーン。みればイヤリングも同じ色だ。」
電車の中。
「最近がんばってますよね。弓井先輩。」
「うん、どうしたんだろうね。」
「なんか、久しぶりに恋の予感がするそうですよ。」
「またかー、あの人は不毛な恋が好きだからなー。」
「でも今度は年下を狙ってるそうですよ。」
「へー…」
男N
「僕は平静を装いながらも頭はフル回転していた。年下?年下?俺も年下…そういえばあの時あぁなってこうなって不思議と弓井先輩と二人になったな。そういえば最近やたらに弓井先輩と食堂で一緒になる。うわー、思い当たることばかりだ!」
「いいなー、私も恋、したいなー。」
「あれ?彼氏いないの?」
「いませんよー。」
男N
(女の口真似で)いませんよーと語尾が車内にのびた。その甘え、その上目づかい。今にも僕の袖を掴んで帰りたくないですって思いつめた表情で言うかのようなこの空気。いかん!いかんぞ!風間くん。君まで僕に惚れたら、うちの課はまるで…、応仁の乱!」
法螺貝が鳴り響く。人馬の喧騒。ここは合戦場。
足軽
「殿!馬をお持ちしました!」
「よし!出陣じゃ!」
足軽
「どうしても往かれるのですか?」
「男には一生に一度戦うべきときがある。それがモテ期だ!はいや!」
男を乗せた馬は走り去る。
足軽
「…モテ期。…本当にモテ期なんだろうか…」
おわり