594話(2007年8月18日 ON AIR)

「偏見」

作・ごまのはえ
朝。夫婦は食事中。
昨日の夜。相撲とりを見たよ。
は?
角に新しくできたマンションあるだろ。下がコンビニになってるとこ。
あのマンションの下に相撲取りがいたよ。
何してたの?
さぁー。マンションに用事でもあったのかな。そこらへんブラブラしてた。
「その日の夜。帰りの遅くなった私はそのマンションの下で相撲取りをみた」
夜の町。車の通る音が聞こえる。
「たしかにそれは相撲取りでした。でっかいTシャツにでっかい半ズボン。帽子を反対に被って。その姿はまるで少年のようでした。そして彼は泣いていました」
SEお相撲さんの泣き声「ごっつあんでーす…」
朝。夫婦は食事中。
あの相撲取り。
え?
ずっとマンションみてるだろ。きっとあそこに好きな女がいるんだよ。
あー…。
「え…」?
なんか、がんばってほしいな。
へー。
「相撲取りに愛された人ははたしてどんな気持になるんだろう。大きくて優しい相撲取りはきっと包み込むように愛してくれるんだろう。そして夕方からは男同士の真剣勝負。きっと心配で見ていられないだろうな。あのマンションに住んでいる人はどんな人だろう。二人はどんな関係でどんな壁にぶち当たっているのか。がんばれ。相撲取り。きっと、いつか、彼女は君のよさに気づいてくれるさ!」
夜の町。車の通る音。
SEお相撲さんの泣き声「ごっつぁぁぁぁんでーす」
朝。夫婦は食事中。
あの相撲取り。相撲取りじゃないな。
え?
あいついつも帽子かぶってるじゃん。昨日かぶってなかったんだよ。
みたら茶髪でさ。ヒップホップ風の。
…ふーん。
「私はすっごく嫌な気持になりました。あのマンションにすんでる女の子がとても可愛そうに思えました。そんな私の顔色に気づいたのでしょう。夫があきれたように言いました」
お前さ。そーゆうの偏見って言うんだよ。
おわり