602話(2007年10月13日 ON AIR)
「 星を見るのが好きだ 」

作 /山内直哉

 

晩秋の夜空
幾千の星が広がる

   

「世の中には、まるで自分のことを歌っているかのような歌がある。僕にとってのソレは、ビートたけしの『嘲笑』っていう歌だ。僕は小学校の頃、毎日のように口ずさんでいた。マキちゃんとの帰り道…」

   
 

秋の虫の音
砂利道を歩く二人の足音

   

♪星を見るのが好きだ 夜空を見て考えるのが何より楽しい

サトくん、またその歌?

なあ、知ってる? しし座流星群って

もう…星の話ばっか。

33年に一度やって来るらしいんだ。流れ星が。遠い空から

ねえ、危ないよ。まっすぐ歩かないと

今週の日曜日。深夜3時頃。特に今年は凄いらしいよ

(立ち止まって)ねえ、アレは?

(立ち止まって)ん、どれどれ?

アレ

どれ?

星じゃなくて

え?

日曜日

日曜日? マキちゃんも一緒に見る? あ、星、嫌いなんだっけ

…キライ!

雨のように降るんだって。星が。雨のようにって凄くない?

栗は?

栗?

栗拾いに行くんでしょ!

あ、そっか。その日だ

朝、起きれるの?

起きれるよ

この前のハイキングだって

もう大丈夫だって

この前も大丈夫って言ってた

大丈夫だよ

星もいいけど…約束も忘れないでよね

忘れてない

   
 

再び歩き出す二人
砂利道を歩く二人の足音

   

栗拾い、また今度にする?

何で?

星見るんでしょ?

見るけど

次の日気にしないでゆっくり見た方が、ね

…うん。じゃあ

うん

うん

…しし座、ナントカ…そんなに凄いの?

今年は特にいっぱい流れるんだ。日本で見れるのは、ひょっとすると生きている間に一度くらいだって。もし見逃したら、一生見れないなんて…何か、凄くない?

…私も、生きている間に一度だよ

え?

今度の日曜日も、生きている間に一度だよ

   
 

足音が止まる
男の頭の中から、辺りの音が消えて行く

   

「僕は、小学生ながらショックを受けた。決して悲しいわけではなく、不思議な感覚で。次の日から、マキちゃんや、クラスのみんながキラキラして見えた。いつも空ばかり見てフラフラ歩いていた僕は、その日からまっすぐ歩くようになった。それでも、ビートたけしの『嘲笑』は僕の大好きな歌だ」

   
 

秋の虫の音
砂利道を歩く二人の足音

   

♪僕らが昔見た星と 僕らが今見る星と 何にも変わりがない それが嬉しい

あなた、またその歌?

   
 

晩秋の夜空
幾千の星が広がる

   
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