639話(2008年6月28日 ON AIR)
「 イヤン相談バカン 」

作 /山崎彬(悪い芝居)

 

イガグリハナタレ男子高校生(16歳)が純情女子高校生(16歳)に相談をしている。
電話ではなく、公園のベンチか体育館裏か、とにかく直接会って。
男女、少しぎこちなくも、なんとなく難しい言葉とか織り交ぜるので、かわいい雰囲気。
関係ないですが、カーペンターズの「Yesterday Once More」を聴きながら、書いてます。
男女の会話は、途中から始まる感じ。

   

「いやんばか~ん」

「いや~んばかん」

「違う。いやんばか~ん」

「いや~んばかん」

「違う。いやんばか~んの『いやん』。いや~んばかんでなく」

「いやんばか~んの『いやん』」

「いやん、やん、OK。で、相談なのですが、僕は今、好きな女の子がいてぇ」

「あなたには今、好きな女の子がいて、いやん」

「そんな感じで語尾に『いやん』つけて繰り返して。繰り返しには気持ちを整理する効果が見込まれる」

「効果は個人の感想です、いやん」

「中学のころからその子が好きだった、だけどもう1年間話をしていない、ていうか違う高校になった」

「私も中学の頃好きな男子がいて何にもできず高校生になって、でも違う高校になったらそいつが好きだったなんてスパッと忘れちった」

「ちょっと」

「待って。まだ私『いやん』言ってない。まだ話終わってない」

「ごめん。でも相談してるの僕なのにあなたの話が始まって。ていうか繰り返してもないもので」

「何それ?語尾に『いやん』添えて語尾宣言せよって、あなたが」

「そうだけど」

「また割り込む。まだ添えてないよ『いやん』。相談の緊張カチコチを薄めましょって。チェーン居酒屋のリンゴジュースくらいに薄めましょって。だからって『いやん』もどうかと思うけど、それに乗ってる私は少なくともあなたの協力者なわけで」

「ごめん」

まだ添えてない。私は協力者なりにマイエピソードを元にあなたの悩みを解決しちゃおうと。(「わかる?」みたいな感じで)いやん?」

「ごめん」

「ま、いいわ。どうぞ。…どうぞ。…あ、どうぞいやん」

「で、1年間音沙汰なしのイガグリ男子から「好きでした」と突然告げられた純情女子はどのような心持ちになるのですか、と。もう遅しかと。」

「ほう、ほうほう、(かなり可愛く)いやん」

「ほうほうしか言うてないっす!!明確な答えを!」

「まあ待ち。ここでさっきのマイエピソードが生きてくる、わかるか?子羊?」

「分からん!!」

「まだ『いやん』を言うとらん!」

「あっ!!」

「その早とちり感がダメ。キープザ平常心。で、私のエピソード。高校、別々、忘れてしまった恋心。この先私は大学に行くのかな、就職するのかな。もっと忘れる。お嫁に行くのかな。もう記憶の中にはない。分かるか?いやん?」

「わかる」

「今も好きなら言うてまえ。10代の脳細胞をなめるなよ。しかしこれもあと幾年。ハタチこえたらヒトの脳細胞は日に日に死ぬぞ。1日100万個死ぬか?知らんが。餃子か?ハタチ越えた脳細胞は大手餃子チェーンの餃子になるのか?知らんか?なんか言え。」

「えっと」

「やっぱいい。とにかく10代のうちに、忘れないうちに、早く思いを告げてよ!ねえ!現に私は今日、別の高校に行った君への思いを、1年ぶりに会って思い出したんだから・・・」

「・・・いやん」

「鈍感、いやん」

「僕が、好きなのは、あなたです」

「いやん」

「相談という自然な形で気持ち探っとりました」

「いやん」

「付き合ってください」

「いやん」

(泣き出す)何だいっ!その『いやん』は語尾宣言かいっ!?」

「いやんいやん」

「好きだー」

「いやんいやんいやん」

「『いやん』はいやん」

「・・・・」

(泣き笑いしながら)何とか言えよぉこの!あっ、待てっ!いや~んいや~ん待て~」

「いや~ん」

「待て~い」

「いや~ん」

   
   
 

10年後、ふたりは結婚します。
おしまい。

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