681話(2009年4月18日 ON AIR)
「 マイケルが来た村 」

作 /ごまのはえ

ゲスト出演・太田浩司

ナレーション

山奥件山奥郡山奥村。山また山に囲まれたこの村は、人口500人にも満たない小さな村だ。しかしご存知だろうが、昔この村にマイケルジャクソンが来たことを。

   
 

のどかな村の風景
旅人と老婆がいる。

   
老婆

うんだ。30年ほど前だけんどよ。おマイケル様はたしかこの村さきただ。一人でよ。

旅人

一人で?

老婆

うんだ。村のはずれにある一本松。そこに行き倒れがおるのを分家のオミヨが見つけてよ。中松んとこの本家の屋敷さつれてったんだ。えらい真っ黒になっとるさけ、風呂にいれて驚いた。黒人さんだったんじゃ。こりゃ大事じゃいうて、村長んとこのバカ息子、こいつは東京の大学いっとるからよ。ちょうど夏休みでかえっとたけん、つれてきてよ。話し聞かせると、おマイケル様だったんじゃ。

旅人

ほんとうにマイケルジャクソンだったんですか?

老婆

うんだ。

旅人

同姓同名の別人では?

老婆

バカこくでね!

旅人

疑うわけではないのですが、なにかその、

老婆

わかった、みなまでういな。ちょうどそんころ中松んとこのベベコの花子がよ。お産で苦しんどった。もう年じゃけ、ダメか思うてあきらめとったんじゃが、おマイケル様が花子の腹さなでなすったら、アラ不思議。立派な子供が産まれたんじゃ。あれがそんとき生まれたベベコじゃ。

   
 

牛の声「モーーー」

   
旅人

・・・

老婆

まだ信じとらんか?

旅人

いえあの、マイケルがそんなことできるなんて、

老婆

おマイケル様じゃ

旅人

すいません。

老婆

まぁええ、都会の人は疑い深けいかんわ。

旅人

あの、他には?

老婆

あんたも知っとるじゃろ。ムーンウォーク。

旅人

あ、はいはい。

老婆

あの歩き方はこの村でおつくりなさったんじゃ。

旅人

え?

老婆

ある月夜の晩じゃった。そんころイタズラもんのイタチがおってよ。村の鶏やら食い荒らしとった。おマイケル様がこらしめなさろうと、イタチのいいなさった。「こりゃイタチ、お前はどうしてイタズラばっかりしよるか?」「しかたがなかとや、おマイケル様、おらには病気の妹がおる、妹の病気には鶏が一番なんじゃ」。おマイケル様はえらい感心なさってな。「だけんどイタチ。村のもんも難渋しとる。これからは妹と二人、わしのハカマのすそを食べなさい」。それ以来おマイケル様が歩きなさると、ハカマのすそに二匹のイタチが、

旅人

え、え、え?

老婆

なんじゃい。

旅人

じゃマイケルがムーンウォークできるのは、その二匹のイタチが?後ろから噛み付いてるってことですか?

老婆

うんじゃ。

旅人

・・・

老婆

つかれたんならそこの岩にすわらっしゃい。

旅人

ありがとうございます。

老婆

それはマイケル出世岩ちゅうてな。そこにいつもおマイケル様が座ってらした。あんたも出世するかもね。

旅人

はぁ。

老婆

今日はどこへ泊まりなさる。

旅人

できればお風呂に、

老婆

温泉があるでよ。

旅人

ほんとですか。

老婆

マイケル湯ちゅうてな。ある日、おマイケル様が「ホウ!」とお咆えなされて、ターンかまして、ビシッ指をお指しなされた。そこから湧き出た温泉じゃ。

旅人

色んなことできるんですね。

老婆

当たり前じゃ、20世紀を代表するスーパースターじゃけな。

   
 

遠くで村祭りの準備の音。

   
旅人

あれは?

老婆

あんた運がええね。今日は祭りじゃけ。

旅人

祭りですか。

老婆

スリラー祭りちゅうてな、年に一回、ご先祖様の霊が蘇ってきなさるんじゃ。

   
 

マイケルジャクソンの「BEAT IT」がかかる。

   
ナレーション

BEAT ITにあわせて踊る村人たちの姿を見ながら、私は自分の心を恥じた。
そこにはひどく懐かしい、そして日本らしい祭りの姿があったからだ。しかし明日には旅立たなくてはならない。この山奥村のさらに山奥に、むかしカールルイスが来た村があると聴いたから・・・。

   
おしまい
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