709話(2009年10月31日 ON AIR)
「 夢で、逢いましょう 」

作 /大正まろん

ゲスト出演/豊島由香

耳の奥で、くるる、くるると音がする。

くるるぅ、くるるぅ、くるるぅ。(くぐもった鈴のように)

プールの後のように、とんとんゆすってみる。
すると真珠のようなま白な珠が落ちてきた。

こんころりん。(真珠が床で跳ねるような)

嗅いで見ると、猫の背中のような、日なたの匂い。

にゃはっはっはっは。(勝ち誇ったように)

こんな所に居たのね。

にょほほ。

急に居なくなっちゃうから、随分と心配したのよ。

しゅるしゅるしゅるしゅる・・・。(煙と化していき)

あ、ねえ待って。

しゅぅぅー。

白い珠は、煙となり、一瞬、男のすまなそうな顔のように見え、そして消えた。

おーい。

気がつくと、毎年過ごした海辺のバンガローに居た。

クジラが出たぞー、クジラだよ、クジラだってば、おーい。

時々、男は途方もない嘘をついた。低血圧の私を起こすために。

嘘なんかじゃない。あともう少し早く起きてくれば、奴らを見られたのに。

奴ら?

親子、恋人かな。ともかくスケールがでかいもん同士のスキンシップ、すごいぜ痺れた。

私も見たかったな。

よーし、待ってな。呼んで来てやるよ。

呼んでくるって、そんな、

奴らとは友達だから。

男はラッコのように楽しげに微笑み波間へ消えた。

おーい。

どこ?

ここ。

ねえ、どこ?どこに居るの?

ここ、ここ、ココ、コケコッコー。(朝を知らせる)

目が覚めると、ダクダクと泣いていた。

だくだくだく、だくだくだく。(ワルツのような三拍子で)

枕についた涙のシミが、いきなりワルツをおどりはじめた。

ラッタッター、ラッタッター、ラッタッター。(楽しげに)

うるさい。

ラッタッター、ラッタッター、ラッタッター(しだいに遠ざかる)

涙たちは、濃厚に絡み合いながら去っていった。

   
 

ちゃぷんと滴のしたたる音。

   

くじら、みつからなかった。

・・・。

ごめんなぁ・・・。

男は私の夢の中で、自由奔放、縦横無尽、変化自在に振舞いながらも、最後に、いつもこう謝る・・・。

ごめんな。

私が謝らせている。わかっているのに、「いいよ」の言葉は喉の奥に引っ掛かり出てこない。

ごめんな。

逢いたいの。せめて夢の中だけでも。まだしばらく、まだもう少し・・・。

・・・うん。

   
終わってまた始まる
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