742話(2010年6月19日 ON AIR)

「代行フレネミー」

作・樋口ミユ
ジュゥウウウウ
フライパンでソーセージを炒める音がする。
トモちゃん
はい、ありがとうございます。代行フレネミーサービスでございます。ええ、はい、 それはサービス内容によって料金は変わりますが、え。合コンなどの場合でしたら、一度試していただいて、感触見てもらって、はい。じゃ、詳細はメールで。今の生活状況と離れた友達を設定するのがお勧めですね。はい、じゃ、ちょっと状況設定のシナリオ作って送りますので、お客様の履歴書、プロフィール、現在の人間関係を詳しく、ええ、メールで。はいー、では。
モちゃんは携帯を切るとソファにドサリと座り込んだ。
トモちゃん
っはぁ、まいどありー3万5っせんえーん。
松本
トモちゃん…
トモちゃん
まつもとー。これまた美味しそうだねー。
松本
トモちゃん。
トモちゃん
コック見習いってキビシーでしょ?皿洗って鍋あらって。
松本
トモちゃん。
トモちゃん
あ、ユウコはまだ帰って来ないの?
松本
残業だって。
トモちゃん
おーえるは大変だぁ。先食べていいよね?いただきまーす。
松本
さっきの、何の電話?
トモちゃん
仕事。
松本
何その代行フレネミーサービスって。
トモちゃん
知らない?フレネミー。
松本
フレンドとエネミーくっつけた造語?テレビでやってたけど。友達と思ってる人が実は自分を陥れる敵だったっつー、
トモちゃん
そうそれー。あれ?仲良しなはずなのに、なんか利用されてね?あれ?よくない噂を広めてたのはあの子なの?ってやつ、あ、これちょっと塩辛くない?
松本
それの、何をサービスするわけ?
トモちゃん
フレネミーの見分け方って知ってる?
松本
あれだよ、相手の情報ばっかり集めて、自分の情報は言わないとかじゃないの?
トモちゃん
そ。会話にウソが多いとか、競争心が高くて、嫉妬深い、噂話が大好きだとか、雑誌で特集組まれてたよ。ほれ。
松本
ああ、チェックリストまである…
トモちゃん
で、大体の女の子の反応は、「あ、そういえば、思い当たる人がいる!」ってなるの。
松本
トモちゃん。
トモちゃん
何?
松本
フレネミーをサービスするの?
トモちゃん
はじめはね、あの子ってフレネミーじゃないかしらって思うの。でもね、今度は、自分が誰かにとってのフレネミーになってるんじゃないかって心配になるらしいの。そしたらどんな行動に出ると思う?自分にとってのフレネミーを出現させるの。「幼馴染がどうやらフレネミーだったみたいで、困ってる」ってアピール。それで、自分自身はフレネミーではないと、主張するわけよ。
松本
トモちゃんが、フレネミーのフリするわけ!?
トモちゃん
これが最近イガイと儲かるのよね。
松本
そういうのもうやめなよ。元カノのフリとかもやってただろ。犯罪の温床だよ?ユウコが心配してさ、
トモちゃん
だって、面白いんだもん。
松本
またそういうこと言う。
トモちゃん
他の人がどうやって人生立ち回っているのか、覗き見出来るんだもん。
松本
悪趣味っていうんだよそういうの。
トモちゃん
人間てものがそもそも悪趣味じゃない。
松本
トモちゃん。
トモちゃん
人間ギライなのあたし。でも松本のことは好きよ。
松本
…へッ!?
トモちゃん
ユウコが遅いのは別の男のところに行ってるからだよ。
松本
へ!?
トモちゃん
なんて、信用しないで、ウソだから。あたしこれじゃまるでユウコのフレネミーだね。
モちゃんは松本が作ったご飯を食べる。
少し、涙をこらえているかもしれない。
おしまい