759話(2010年10月16日 ON AIR)
「弾丸ワード」

作・樋口ミユ

  
 

銃撃戦
飛び交う、弾丸。
ひゅんひゅん
防弾するものなど一切持たない、研修生が弾丸の前に
飛び出して、叫ぶ。

  
研修生

ニンゲンのぉ、叫ぶ、言葉はぁ、弾丸のようにぃ、

  
 

もう一人、ベテランが飛び出して、

  
ベテラン

バッカ!伏せろ伏せろ。頭飛ばされたいのか!?

  
 

ガバっと、ふたりは腹ばいになった。

  
研修生

先生!伏せて隠れてる場合じゃありません!ニンゲンのぉ、

  
 

と、また立ち上がろうとするが、

  
ベテラン

おぉっと、落ち着け落ち着け意気込みは買うけど。

研修生

買いますか!?買えるほどの意気込みありますか!じゃもう弾丸とか全然怖くないっすね。弾き飛ばせる気合おかわりいきますか!?

ベテラン

おお、おぉ、だから落ち着け。興奮しすぎていいことひとっつもないから。

研修生

興奮しなきゃ詩人じゃないっすよ!先生、一発ヤツラにかましてやってくださいよ。

ベテラン

ん?

研修生

え?

ベテラン

かます武器はこっちの手元にないヨ?

研修生

は、何言ってんすか、自分たちの武器は言葉じゃないすか。ここは一発ドカンと、

ベテラン

え、何言ってんの?

研修生

え、何って、何!?

ベテラン

だって、山田くん、これはデモンストレーションじゃないよ。飛び交ってるのは実弾だよ?

研修生

いや、だから…。だからじゃないすか。先生、授業で、黄金の詩人は言葉は、どんなものにも打ち勝つって!言葉を磨いて、尖らせて、時に弾丸を跳ね返す武器になり、はらりと舞い落ちる花びらのように何十にも積み重ね、時に体を包むクッションのようになり、熱い甲子園球児が投げるストレートのように、心臓に投げ込めば命を吹き返らせる電気ショックだと、先生話しくれたじゃないすか。今、それを、やるべきっすよ。

  
 

ガガガガガガガ
銃撃戦はやまない。

  
ベテラン

…そうだよ。

研修生

ですよね!?

ベテラン

そうあるべきなんだよ。

研修生

なんですよね!?おーし、行くかぁ!

ベテラン

でもね山田くん。

研修生

ハァイ!

ベテラン

君、黄金の詩人じゃないからサ。君の言葉じゃ実弾飛び交いっぱなしだよ?

研修生

ナニブン、まだ研修っすからね…

ベテラン

知ってる?実弾って当たると、痛いんだよね。

研修生

あ、たった。こと、あるんすか?

ベテラン

うン。研修中にね。かましてやろうと、飛び出してね。ココ

研修生

ドタマ、直撃…すか…

ベテラン

まだね。あるよ。ここに。めりこんだ弾丸。

  
 

ガ ガ ガ ガガガガガガガガガ

  
研修生

あ。分かった。先生、そんな話しても、自分、絶対、ヒよりませんから。

  
 

ガガガ

  
研修生

言葉は弾丸で、

  
 

ガガガ

  
研修生

言葉は花びらで、

  
 

ガガガ

  
研修生

言葉は流れる水だって、

  
 

ガガガ

  
研修生

先生から教わったんすよね。

  
 

ガガガ ガガガ
ガガガガガガガガガ
研修生は銃撃戦の真ん中へ歩いていく。
丸腰、唇に言葉

  
研修生

ニンゲンのぉ 叫ぶ言葉はぁ、弾丸のようにぃ、放物線をぉ、描く。狙いを定める、今、そこへ、届け…

  
 

銃撃戦は、止む事はない。
研修生の言葉は、飛び交って消える。

  
ベテラン

そうなんだ。そうありたい。そう、あるべきなんだよ。

  
 

銃撃戦は、やまない。

  
  
おしまい
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