773話(2011年1月22日 ON AIR)
「ゲームセンターに輝く幾千のメダル」

作・山内直哉

  
 

ゲームセンター
メダルの出る音

  

うわっ、またメダルでた(と、半笑い)

(半笑い)

(メダル入れながら)コレ、メダル10枚で賭けたら、結構当たる確率も上がるのかもしれない。消費は大きいけど、結局、その方がさらに当たるっていう…

  
 

ゲームスタート
ボタンを押す音

  

よし、来い、来い…

それ、自分の力でコントロールしてんの?

いや、たぶん、コンピューターじゃない?

よくそんな単純なゲームで白熱出来るよね

  
 

メダルの出る音

  

ホラ、また出た(と、笑えてくる)

(笑えてくる)

やってみる?

いい

コレ、メダル減らねえ(と、メダル入れて行く)

ねえ、あの、お爺ちゃんお婆ちゃんが、さっきからずっとUFOキャッチャー頑張ってるんだけどさ、なかなか取れないのよ

何か、微笑ましいよな。最近、よく見かけない? 老夫婦

うん。アレさあ、店員さんに言ったら、落としやすい位置まで移動させてもらえるの、知らないのかなあ。教えてあげた方がいいかなあ

  
 

ゲームスタート

  

やめといた方がいいんじゃない?

  
 

ボタンを押す音

  

二人だけの力で取った方がやっぱ、喜びも増すわけだし

勿体無いよ。ホラ、また200円使ってる

  
 

メダルの出る音

  

何か、アレかもしれないよ? 思い出のUFOキャッチャー。昔、UFOキャッチャーの腕に惚れて結婚したとか

昔、あんなUFOキャッチャーないでしょ

取り方、あまり分かってない…っぽくない? アーム止めるのも、ホラ、横から見たり全然しないし。男の意地かな

お婆ちゃん、いい顔してるわあ

いいねえ(と、笑みがこぼれる)

(笑みがこぼれる)

一回200円の価値を越えてるね。ぬいぐるみ取れなくても

どんな出会いだったんだろ。ゲーセン好き同士なのかなあ

昔は、インベーダーゲームとか? 喫茶店で出会ったのかもしれないよね

ああ、『インベーダー、お上手ですね』って?

『あなたもやってみますか?』みたいな

ああ

それをきっかけに結婚?

そうそう

そんな単純な

いや、結婚したいと思う瞬間なんて、案外単純なもんでしょ?

そう?

例えば、腕の血管が浮き出ているの見て、あ、この人は守ってくれそうとか

ああ、まあ、確かに、そうかなあ。結婚を考える“瞬間”…

あ、分かった。あの横顔だわ。ホラ、真剣にぬいぐるみを見つめるお爺ちゃんの表情

いいねえ

この人は子どもにも真剣に向き合ってくれるんじゃないかしら…って

なるほどね。コレはますます言いに行けないだろ。『取りやすい位置に置いてくれますよ』なんて。教えることの罪みたいな

行って来る

え?

あ、メダル、ちょっともらうね

  
 

メダルを一掴み持って老夫婦の元へ行く女
それを遠くから見ている男
ゲームセンターの音が邪魔して老夫婦と女の声は聴こえない

  

「あいつは…社交的なヤツだなあ…(苦笑して)お婆ちゃん、驚いてるし。そりゃそうだよな。突然、メダルを手土産に若者がやって来たら、何なんだ!?ってなるよな。あ、でも、みんな、笑顔だなあ。おっ、お爺ちゃん、喜んでるじゃないか。やっぱ困ってたのか。あいつ、お婆ちゃんにハグしてんじゃん。ええっ? どんだけ仲良くなるの早いんだよっ。ああっ、メダル落ちてるし…もう、迷惑なヤツだなあ(と、失笑)」

  
 

ゲームセンターの音に混じって女の笑い声が届いて来る

  

「あいつ、どんなお婆ちゃんになるんだろ…」

  
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