775話(2011年2月5日 ON AIR)
「赤い糸」

作・ごまのはえ
ゲスト出演・延命聡子

 

ジリリリリと目覚ましの音。
女はベットから起き上がる

  

(小指の先についた赤い糸に気がつく)…あれ?なにこれ…

男N

ある朝、彼女には見えたそうだ。運命の赤い糸が。小指の先からだらーんとたれて、糸はずっとずっとつながっていた。

よし。いくか。

男N

彼女は旅にでた。自分の赤い糸が繋がる先を探す旅。会社は休み、万が一に供えてパスポートも持って。糸をたぐってたぐって、進んで進んで。先の先へ、どんどん進んでゆく。

どんな人だろう…。

男N

糸は山の中に繋がっていたそうだ。

え?もしかして山男?

男N

ドキドキしながら山の中を進む。薄暗い竹やぶの中で、彼女の赤い糸は…。

あら…。

男N

切れていた。

  
 

女は切れた赤い糸の先を見つけ。

  

なるほど。

  
男N

そして3年後。僕は大学の三回生。カフェでバイトをしているときに僕と彼女は始めて出合ったのだ。

あのー。すいません。ちょっと、すいません。

うわ!

あ、怖がらなくていいですよ。

男N

彼女の右手には大きなハサミが握られている。僕の小指をジロジロ睨んでいる。

あ、全然怪しい者じゃないので、すいません。

男N

パントマイムのように空中の糸をつかんで、ハサミで、

  
 

「ジョキン」

  

あは。やっぱ切れるんだ。

なんなんですか?

まぁまぁ。

男N

そしてまた怪しい手つきで、糸と糸をチョウチョ結び。

これでよし。

は?

ごめんなさいね。また来ますし。

男N

はぁ…。それから何故だろう。僕は彼女のことが忘れられなくなって、でも彼女はなかなか来なくて、やっと店に来てくれたとき、質問したいことがいっぱいあって、でもそんなことより先に、僕は自分でも驚いた。彼女のことが好きになっていたのだ。

  

あのー。結婚してほしんだけど…。

あーハイハイ。結婚ね。

  
 

「ウェディングマーチ」

  

不思議だ。

何が?

まるで運命の糸で引き寄せられたみたいだ。

違うわよ。

え?

努力よ。

  
男N

そして年月が流れた。僕らは幸せに暮らした。子供もできた。沢山苦労もした。でも僕らはいつも一緒で、基本仲良く暮らしてきた。何もすることがない日曜日。彼女が喋り始めた。

あのね、ある日の朝、急に見えるようになったの。

何が?

運命の赤い糸。それでね…

  
おしまい
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