8話(1996年5月24日 ON AIR)

「虹色の小さな貝二つ」

作・水こし 町子
まあるい地球の どこかに
さかさに 伸びている
大きな樹が あって
花は 咲かないのに
花粉が 飛ぶように
その樹から
ふわり ふわり
新しい命が うまれているの
楽しくなるわ
ぼくは この葉に なってみたい
この葉に なってみると
生き返ってきた恐竜が
もどってくるような
息をとめて この葉になって
ほら ね
私も 幼稚園の
大きな いちょうの木
通学路の途中にあった
ポプラの木
今でも 心の中で
いちょうの葉も
ポプラの葉も
ユラユラ 風にゆれている
いつか 砂浜に座っていたら
足の釣り糸のからんだままの鳩
言葉を 持たない鳩が
言葉にはない
親しさで近づいてきた
家に戻っても
その鳩が そこに
そのまま いるわけはないのに
そのままの姿で浮かんで
夢の中のぼくに話しかける
私の宝物の中に
海を大きく またいで
七色の虹のでた日
この砂浜で探した
虹色の小さな貝が五つ
あなたに二つ
プレゼントするわ
今度 美術館へ 行こう
ぼくの好きな絵を
君に見せたい
本当に天国があると思った少女に
星を見つけた
湖のそばの少年に
フルートをいつも持っている少女に
童話をつくる少女にあって
仲良くしたい
はしごをかけたレモン色の月
海はいつも
うれしい空につながり
宝物のふたが
ほんのすこしづつ開いて
未来のうつりそうな
ガラス玉の中で
しあわせがクルクルまわる

手をつなごう

五月の花の町を歩くのは
すこし急な坂道でも
あなたがいるからこわくない
昨日の友達の結婚式
ワインはブルゴーニュ

二人に乾杯

つまり こんなふうに
水玉色の 昨日と
ピンク色の 今日と
こいみどりの 明日が
かわるがわる来る
日がのぼり 月のでるまで
ぼくたちの話をしよう
ぼくたちだけで 話をしよう
五月の風は やさしい
ずっと待っていた
うれしい季節が
一度にやってきた
みどりの海
みどりのフカ
みどりのにおい
よせてくる波の ひとつひとつを
リボンでむすぼう
この海は わたしたちの
思い出作り
沖合を 貨物船が
遠い国へ むかっていく
ぼくたちも
手こぎの小さな船で
船出しよう