808話(2011年9月24日 ON AIR)
「ブラックコーヒーを好きになった日」

作・ナカタアカネ

  
 

車道を走っていく車の音と行き交う雑踏に紛れて、溜息を付く女。

  

本日は、お疲れ様でした。

お疲れ様でした・・・・・・。

やっぱり・・・・・緊張しましたか・・・・・しますよねえ。

ええ・・・・・・予想外の質問ばかりで・・・・自分を動物に例えると何ですか?
って・・・・・何なんですか・・・・・あの質問。
普通、エクセルとかのスキル聞くとかなのに・・・・あんなの初めてです。

ですよねえ・・・・・・・事前に言ってくれたらいいのに。

でも、事前に言ったら・・・・・・・きっと意味ないんでしょうね、意味分からないですけど。

ですよね・・・・・・・・あの、良かったらコーヒー飲みませんか?

え?

缶コーヒー、で何ですけど・・・・・・・(小銭を入れる)どうぞ選んで下さい。

はあ・・・・。

  
 

女、自動販売機でボタンを押してガタンゴロゴロと缶コーヒーが出て来る。 同時に、ピピピと音がして電子音のファンファーレの様な音がする。

  
2人

え!?

当たった・・・・・んじゃないですか!?

当たったら・・・・・・・・もう一本貰えるって「アレ」ですか?

そうです、そうですよ・・・・・「アレ」ですよ!

・・・・・・・わあ!

  
 

女、思わず自販機のボタンを押す。ガタンゴロゴロ。

  

どうぞ。

え?

二本も缶コーヒーは、いいですから。

でも・・・・・。

(遮って)いえ、お裾分けです。

どうも・・・・・・・・(受け取って)・・・・・・ブラック。

え・・・・・・ダメですか?

いえ、いただきます。

こちらこそ・・・・・・いただきます。

  
 

缶コーヒーをプシュッと開ける音。
車道を走っていく車の音と雑踏。

  

(飲んでホッと一息)・・・・・・あれ、飲まないんですか?

いえ・・・・頂きます・・・・・・・(飲んで)・・・・・苦い・・・・・・でも、美味い!?

そのブラックコーヒー、美味しいでしょ。

いけますね・・・・・これ。

  
 

2人、少し笑う。

  
2人

・・・・・・・・・・・あの。

あ・・・・・どうぞ。

いえ・・・・・どうぞ。

あの・・・・・・いつも、こうなんですか?

え?

いつも、缶コーヒーご馳走されるんですか?
面談の付き添いで・・・・・・・ただの派遣だし・・・・・それに、まだ仕事決まっ た訳じゃないのに。

初めてです・・・・・・あの、ご迷惑でしたか?

いえ・・・・・迷惑とか、そんなんじゃなくって。
さっきの面談で緊張したから・・・・・・気を使わせたのかなあって。

たぶん・・・・・・・一番、緊張してたの僕です。

は?

実は・・・・・・今日の案件、部署替えでの初めての仕事なんです・・・・
だから、絶対成功させるって意気込んじゃって・・・・・・。

なのに、質問があれですもんね。

はい・・・・・頭、真っ白ですよ。

(少し笑って)面接してるの、私なのに。

(苦笑い)ですよね・・・・・・・。

大丈夫です・・・・・・きっと、上手く行きます・・・・って私が言うの変ですけど。
当たりは出るし・・・・・なんか今日はいい日になる・・・・・そんな気がします。

僕も、そういって貰ったら・・・・・そんな気がしてきました。
正直言って、営業とか抵抗あったんですけど、このブラックコーヒーみたいに 好きな仕事になりそうな・・・・・そんな気がします。

(少し笑って)良かった・・・・・。

有難う御座います・・・・・・コーヒーで何ですけど、乾杯。

こちらこそ・・・・・・乾杯。

  
  
終わり。
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