812話(2011年10月22日 ON AIR)
「光がない」

作・べかお(コレクトエリット)

  
 

まっくら闇。なにも見えない。
声が聞こえる。

  

おい、ちょっと待って。

  
 

沈黙。

  

おーーーーい。おい。あれ?なに?これなに?どういうこと?

なに?

わっ!急に来るなよ!なんだよ!

  
 

沈黙。

  

ちょっと!黙らないでくれる!?

びみょう…

おぉ…

なに?なんか、慌ててんの?なんか、焦ってる?

いや、ちょっと、どこ?お前、いるの、どこ?

は?

いや、だからさ、ちょっと、いや、もっと、しゃべってくれない?

え、私のいる場所がわかりたいの?

そりゃそうでしょうよ!……あ、ごめん、ちょっと、しゃべって。声、声、くれ、声を。

わかるわけないでしょう。

  
 

沈黙。

  

なんで?しゃべれば、ほら、声のする方にさ、向かっていけばさ。

言うまでもないけどさ。

じゃあ言わないでくれる?

やってるでしょ、さっきから。

なにを?

とぼける意味わからないけどさ。声がする方、向かってるでしょ?さっきから。

そうだけど?なにか?…いや、これは、お前も動くから!

動いてないよ!

えぇ!

  
 

沈黙。

  

うそ。まったく?

そう。

え、なにこれ?俺の感覚がおかしくなってる?だって、え、動いてないとかありえないから。

信じるも信じないもあんたの自由だけど。

そんな言い方はやめて!こわいだろう、それは。

なんで?

  
 

沈黙。

  

感覚的に?こわい?ちがう?ちがわない?どう?返事に困る?答えようと思えない?もう関わりたくない?そんなことない?そんなことでもない?

  
 

沈黙。

  

こうやって、沈黙してると、俺はひとりで、ただただいるだけ、って感じになる。お前は本当にいるのか、そこに。

いると思うけど。

さっきからさ、俺は横になってるわけ。仰向けになって、背中を下にして、横になってんの。

それで?

わかんなくなるわけ。目に見えるものがなくて、こうやってしゃべってるのも、相手がいるのかどうか。

やだなぁ、それは。

お前はちがうの?

ちゃんと話はきいてるつもりだし、しゃべるかぎりは伝えたいことがあるんじゃないかな。

ふーん。

まっくらでしょ?今。

うん。

それが当たり前になっちゃいけないっていうか。

どういうこと?

今、当たり前になってない?

なにが?

例えばまっくらなこの状態。

そんなことないよ。

本当に?

ああ。

本当の本当に?本当の本当の本当に?本当の本当の本当の本当に?

意味がわかんないよ。

本当に?

人のことそんな疑って、なにがしたいんだよ。

不安なだけ。不安を押し付けちゃって申し訳ないけど。

  
 

沈黙。

  

俺は、あきらめないよ。こうやって、お前と話してるかぎりは、あきらめない。

なにをあきらめないの?

いろんなことだよ。なんかわかんないけど、いろんなこと。

わかんないっていうのは、ダメな気がするけど。

  
  
沈黙はつづく。おわり。

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