851話(2012年7月21日 ON AIR)
「コオロギと少女」

作・ピンク地底人3号

  
 

少女が雪降る中、マッチ売りの少女よろしく焼きコオロギを売っている。

  
少女

焼きコオロギいりませんか?焼きコオロギいりませんか?

  
 

しかし焼きコオロギは売れない。

  
少女

はぁ・・・今日もコオロギ売れないなぁ。ひもじいよ。ひもじいよ・・・

  
 

そこへコオロギの息子がやってくる。

  
息子

あのすいません。

少女

あ。コオロギですか?一匹100円になります。

息子

いや。ちょっとお尋ねしたいことがございまして。実は私、コオロギの息子なですが、母を探しているんです。どこかで見かけませんでしたか?

少女

特徴は?

息子

首に真珠の首飾りを付けた・・・

少女

あ・・・

息子

ご存知ですか。

少女

それってもしかして・・・

  
 

少女はコオロギを入れた袋を見せる。

  
息子

母さん・・・

少女

すいません、焼いてしまいました・・・ごめんなさい!でも私、コオロギを焼くことしか取り柄がない女なんです!

息子

いえ。気になさらないでください、実は母は、もう先が長くなかったのです。
病院を抜け出してどこへ行ったかと思ったら・・・

少女

・・・本当にすいません。

息子

あの御嬢さん。この母さんコオロギ、一ついただけますか。

少女

あ。もちろんです。どうぞ。(とコオロギを渡す)

息子

安らかな顔だ・・・母さん。もう安心して天国に行ってください。僕は大丈夫だから・・・

少女

あの・・・これよかったらどうぞ。マヨネーズです。とってもコオロギに合いますよ。

息子

そんな。悪いですよ。

少女

いや悪いのはこっちです、受け取ってください。じゃないと私の気が収まりません。

息子

・・・ではお言葉に甘えていただきます。

少女

コオロギにはマヨネーズが一番です。

息子

ええ・・・

  
 

  
息子

あ。あの。

少女

はい?

息子

もしよかったら、これから私とお茶しませんか。

少女

え?

息子

いや、あなた、コオロギを売っているだけあって、とてもコオロギに詳しそうだから・・いや、僕自身コオロギだからそのなんていうか・・・ずっと探していたいんです。コオロギについて語り合える人を。

少女

・・・はい。

息子

・・・よかった。

少女

あの、実は私、今とてもお腹を空かしていて。ここ数日焼きコオロギしか食べていなくて・・・

息子

それはいけない。そうだ。この近くにお勧めのカフェがあります、そこのオムライスがいけるんです。いきましょう。

少女

オムライス!嗚呼。是非。

息子

きっと気に入ると思いますよ。

少女

ええ・・・

  
 

  
少女

あの・・・

息子

はい?

少女

・・・実は私もあなたみたいなコオロギをずっと探してました。

息子

・・・(照れて)ああ・・・じゃあ行きましょうか。

少女

はい。

  
 

二人は手をつないで夜の街へ消えていく・・・

  
  
  
終わり。