86話(1997年11月21日 ON AIR)

「銀河の果てに待つ人に・その三〈告白〉」

作・飛鳥 たまき
ジャン
「ベベ、ベベ……ベベ…
こうして君の名を口にするだけで、
ぼくの心は幸せに満たされる。
君のバラのような唇、燃える瞳
ベベ、ベベ…
もう、君なしではぼくは生きていけない
息さえできない」
ベベ
「私の愛しい人、ジャン。
ゆうべ、あなたのお名前を大きな字で書いて枕の下にしのばせました。
夢の中であなたにお会いするまでは目覚めないと決めて。なのに、あなたはひどい人。
どうして会いに来てくださらなかったの?
ああ、でも許してさしあげます。
今朝は小鳥たちがとてもいい声で鳴いていますもの。風がとても気持ちよく吹いていますもの。」
マリコ
「うまくなりたい。今日ほどそう思ったことはなかった。
『人を愛したことないの?』
屈辱的な言われ方」
木崎
「うそっぽい台詞だよな。マリコでなくても泣きたくなるよ。
だけど、これこそ芝居、これこそ台詞、だよな」
ジャン
「ベベ、君が片時でも見えないとぼくの心は乱れる。君の魅惑的なまなざしが他の誰かに向けられているのじゃないか。柔らかな肌に誰かが触れはしないか…
愛するベベ。
君の心は変わりはしないだろうね。
ぼくの想いは、君への思いは永遠だ」
マリコ
「台詞が入らなくなってしまった。気がつくと、台本を手に夜の公園。半円形の小さな野外劇場。私はステージ中央に立つ。
『永遠?』『永遠?』……
 (何度も調子を変えて台詞を声にしてみる)
ベベ
「永遠?愛にそんな約束はあったでしょうか?
鳥が飛び立つように、水が流れるように、時はいつも過ぎ去っていきますわ。ジャン、約束してくださいな。もうこれ以上私の心を盗まないと」
(木崎、公園にやってくる。ステージにマリコをみつける。ゆっくり近づきながら)
ジャン(木崎)
「盗んだのはベベ、君の方。ぼくはもう、ひたぶるに君のもの。もはや限りなく君のもの」
マリコ
「木崎くん?!どうして?」
木崎
「どうもうまくいかなくってさ。キャラクターが遠すぎるのか、台詞が近すぎるのか…」
マリコ
「なんか私、今日、みっともなかったよね」
木崎
「気にすんな」
マリコ
「昔人は、本当にこんな風に愛を告白していたのかしら…」
木崎
「くすぐったいよな、この甘さ。けど、普遍的だよな、この台詞」
マリコ
「木崎くんもこんな風に告白するの?」
木崎
「えっ………」
マリコ
「ふふふ…あわててるー。ちょっと思っただけ。木崎くんの愛の告白はどんなんだろうって…」
木崎
「マリコにからかわれたら、俺、立つ瀬ないな」
マリコ
「…そっかー…木崎くんも思ってるんだ。マリコは人を愛したことがないって」
木崎
「思ってないよ、そんなこと。一度も人を愛したことがなくって、そんな幸せな顔をしたやつはいないからな」
マリコ
「幸せな顔してる?私が?……木崎くんは?」
木崎
「俺?…俺も幸せな面してるんだろうな」
マリコ
「うん、してる。………木崎くんも人を愛したことがある。私も……大好きな人がいる…」
木崎
「大好きな人?」
マリコ
「…そう……なのに…どうしてうまく出来ないんだろう……」
ジャン
「ベベ。愛している、愛している…ぼくの愛はもう、限りがなくなってしまった。銀河の果てに届くまで言い続けよう…君を愛している、愛している、愛している……」
ベベ
「私の愛しい人、ジャン。
ぬけるように青い今日の空に誓って、
金色に輝く太陽にかけて、
愛する心においては、
私の方が勝っていましてよ」