863話(2012年10月13日 ON AIR)

「INTO THE LIGHT」

作・ナカタアカネ
ざわめきが聞こえる中、ドアをノックする音。
はーい、どうぞ。
バタンと閉じると、ざわめきも消える。
女、男の顔を見てパッと表情が明るくなる。
今日の試合も、ヨロシクね。
(不機嫌になる)・・・・・・・・・・・・・・・・。
どうしたの・・・・・・調子悪いの?
(口真似して)調子悪いの・・・・・・それって、先輩の方じゃないですか?
え・・・・・何・・・・・・どこが・・・・・・変?
いつも通りだけど・・・・・・.
ええ・・・・・いつも通りですけどね、ホント・・・・。
それじゃあ、リングの上と一緒・・・・・いつまでオネエ言葉なんですか。
だって・・・・・試合前だし・・・・・だって、これが仕事だもの。
オネエ言葉で、カッコイイこと言ったみたいな顔しないで下さい。
そんなこと、言われても・・・・・・うちのプロレスはエンターテイメント溢れる笑いも提供するプロレス団体って分かってるでしょ。
このキャラを維持するのが、あたしの努めなの。
でも・・・・・先輩、そのキャラじゃなくっても充分、強いのに。
普通にプロレスやって強いのなんか・・・・今の時代、当たり前。
お客さんは、他にはないものを求めてるんだから。
だからって・・・・・・・なにもオネエキャラじゃなくっても・・・・・・・。
このキャラあって、デビュー出来たんだから文句ないわよ。
さっきから何・・・・・・ピーチ、機嫌悪いの・・・・・試合前でナーバスとか。
もうリングネームで呼ぶのやめてください・・・・・楽屋で。
だって・・・・・・うっかり、リング上で「モモコ」って呼ばれても困るでしょ。
まあ・・・・・そうですけど。
もう、年齢も本名も内緒の、ファンタジーな女子レスラーでしょ・・・・あんた。
・・・・・・・・・はい。
何・・・・・・・ふくれっ面してるの。
三日前の試合で、打ちどころでも悪かった?
まさか・・・・・怪我でもしたんじゃないでしょうね!?
してません。
良かった・・・・・・・焦ったじゃない。
加減してるけど・・・・・・・まさかって、あるじゃない。
あの・・・・気持ちは、有難いんですけど、手加減とかやめて欲しいんです。
え?
いくら、笑って楽しめるエンターテイメントでも、男女混合マッチでも・・・・手加減とかしてほしくないんです。
でも・・・・・・。
だって、お客さん・・・・・・皆、楽しむ目的は色々あっても「プロレス」を観に来てるんだから・・・・・・「プロレス」ちゃんとやりたいんです。
でも・・・・・・去年みたいなことになったら・・・・・・俺・・・・・。
(遮って)大丈夫です!
あれは、事故です・・・・・・受け身が出来なかった私が悪いんです。
もう、脳震盪起こすようなことしませんから!絶対!
でも・・・・・脳震盪だけじゃないでしょ、怪我だって・・・・・。
怪我だって、しません・・・・・絶対って言い切れないけど。
プロレスなんだもの・・・・・手加減してもらって、プロレスラーだなんて言えないですよ。
・・・・・・・・・・・・・。
弱いけど、アイドルレスラーだからOKみたいなの・・・・・嫌です。
わかった・・・・・・・・じゃあ・・・・・手加減なしで行くわよ。
はい・・・・・・・それと、もう一つ。
なに・・・・・・?
普段の私にも・・・・・手加減しないで欲しいんです。
えっ?
私のこと・・・・・先輩レスラーとしてっていうか、オネエキャラじゃなくって・・・普通の男性として見て欲しいんです。
えっ・・・・・・えっ・・・・・・!?
全然、オネエじゃないのに無理してキャラ作って・・・・・せめてリングじゃないところぐらい、普通の男性として・・・・アイドルレスラーじゃない私と接して欲しいんです。
というか・・・・・スポットライト浴びてなくても、先輩をちゃんと見たいし・・・・私のこともちゃんと見て欲しいです。
分かった・・・・・・・もう、キャラに逃げたりせずにちゃんと君のこと見る。
手加減もしない・・・・・だから、絶対怪我もしないで欲しいし、無理なときはちゃんと言って欲しい・・・・・・・。
先輩・・・・・・すっごいカッコイイです。
やだあ・・・・・照れるじゃない。
あ・・・・・・・。
なんてね・・・・・冗談。
二人、思わず笑い合う。
ゴングの鐘が鳴り響く。
終わり。