883話(2013年3月2日 ON AIR)
「泥にくすんだ君の銀色」

作・ピンク地底人3号
ゲスト出演・橋本浩明(燐光群)

  
 

近所のファミレスにて。

  
おまえ変わったなぁ。全然地底人って感じじゃないよ。

もうそんな時代じゃないでしょ。ちゃんと参政権だってあるんだからさぁ。

SF大学の時と言ってること180度変わってるじゃん。
あの頃はどれだけ泥まみれになれるかに必死だっただろ。

子供だったんだよ。

どーしたの。そのスーツ?

何か変?

凄い御洒落じゃん。

そう?普通だよ。

ずっと茶色いパーカーしか着てなかったじゃん。

仕事帰りなんだよ。仕事にパーカーじゃいけないだろ。

香水なんかつけちゃって。

何?臭い?

いや別にそんなことはないけどさ。

君の方はどうなの仕事。順調?

俺?俺は今、失業中。

クビ?

まぁそんなところ。上司とやりあっちゃってさ。給料がね。上がらないんだよ。

どこもそうでしょ。

違うよ。俺が宇宙人だからだよ。

えー?今時珍しいね。

そいつがさ。根っからの地上人なんだよ。
いまだに宇宙人に侵略されると思ってるわけ。

そいつ、古いね。

そう。古いよ。時代遅れもいいとこだ。

  
 

二人は笑う。

  
君は変わってないね。

まぁそれなりに宇宙人の誇りっていうの?あるから。

たぶんそれが気に入らないんだよ。

でも仕方ないじゃん。俺は誰が何といおうが宇宙人なんだから。

君さ。以前にも増して、顔色、銀色だね。

うん。毎朝、磨いてるんだ。君はあれだな。
すっかり地上人の顔だ。昔はもっと顔面を泥だらけにしてた。

まぁ社会人としてね。泥だらけはやっぱりまずいことに気がついちゃったんだよ。大丈夫?その顔色で?宇宙人の人権が認められてるといっても再就職厳しいだろ。

やなこというなよ。俺は絶対に君みたいに迎合したりしないよ。

別に迎合してるわけじゃないよ。

じゃあ君のその清潔さはなんだ。

これは身だしなみの問題だ。

・・・ならいいけど。

で、何?話って?

・・・うん。実はね。今、俺、ある組織に入っていてさ。広い場所を探してるんだ。

組織?何の?

うん。もう一度地上侵略をしようかと思ってて。

・・・さっき言ったこと撤回する。時代遅れは君の方だ。

いいから聞いてくれ。爆弾を大量生産する場所がほしいんだよ。
地底にならいくらだってあるだろ?

ないよ。地底世界は地上人に降伏して以来、
すべて埋められたのは君だって知ってるはずだ。
今時の地底人はみんな、地上暮らしだよ。

じゃあこの土の匂いはなんだ?

え?

いくら香水で誤魔化したって駄目だよ。君からはまだ土の湿った匂いがする。

・・・俺はもう地底人はやめたんだ。

なぁ。もう一度、地上侵略やってみないか?
地底人と宇宙人の時代を今度こそ築くんだよ。

  
 

  
ごめん。今度俺、地上人と結婚するんだ。帰化するんだよ。

・・・そうか。

・・・もう行くよ。

  
 

Kが立ち上がる音がする。

  
ちょっと待て・・・おめでとう。

ありがとう・・・地上侵略、楽しみにしてるから

  
 

Kはファミレスを出ていきSは席に取り残される。

  
  
  
終わり