914話(2013年10月5日 ON AIR)
「秋の夜長」

作・ナカタアカネ
ゲスト出演・小中 太(子供鉅人)

  
 

賑やかな歓声が聞こえてくる。
テレビで野球の試合を放送している様子。音が消える。

  

ん?

  
 

リモコンでテレビを消すと、カリカリとガラスを引っ掻く様な音が聞こえてくる。

  

もう、そんな時間か・・・・・はいはい。

  
 

ガラリとベランダを開ける。

  

お待たせ。

  
 

トンという軽い足音。

  

いつものだけど、どうぞ。

  
 

ニャンという猫の鳴き声。

  
ネコ

吾輩・・・いえ、あたくしはネコであります。名前は・・・まだありません。

なんか、すっかり懐いちゃったなあ・・・・なんで?

ネコ

いや、なんでって・・・・お忘れかもしれませんが、
あなたが「命の恩人」だからですよ。
あれは忘れもしない昼下がり・・・お散歩コースでカラスに突如、襲われた時に、
勇猛果敢に救いの手を差し伸べて下さった「命の恩人」、勇者じゃないですか!

  
 

ニャン。ニャーン。ゴロゴロ。

  

ん・・・・やっぱり、あれかなあ。

ネコ

分かってくれましたか・・・・あれですよ、あれ!

やっぱり、餌・・・だよなあ。

ネコ

ちがーう、ちがいますよ!

そうか、やっぱ・・・・ご飯食べたいよなあ。

ネコ

ち、がーう!ちがいます!ちがいます!

  
 

ニャンニャンニャー。

  

ちょっと、あんまり鳴いちゃダメだって。
ここアパートだから、マズイんだよ・・・・しー、静かに。
って言っても、分かんないよなあ。

ネコ

わかります、わかるんですよお。
ああ・・・・「命の恩人」に、ごはんを貰ってるばかりか、
ひょっとして迷惑かけちゃってる・・・・ああ、なんて・・・・・あたくしはダメなネコなんでしょう。

あれ・・・・・急におとなしくなった。
ひょっとして、俺の言ってること・・・わかるのかなあ。

  
 

ニャン。

  

うーん・・・・わかるわけ、ないか。

ネコ

いや、わかるんだってば!

何・・・もっと、おかわり食べたいのか?

ネコ

違うし・・・・もう、お腹いっぱいです!

ん・・・・・いらないの?
お前の言葉が、分かったらいいのになあ・・・・・って無理か。
だって、お前・・・・・女の子だもんな。

ネコ

え?

俺さあ・・・・なんかイマイチ女の子の気持ちに疎いっていうか、なんというか・・・・
分かってないんだって。
色々・・・・・頑張ってみたんだけどさ・・・・・ふられちゃってさ。

ネコ

ああ・・・・・こんな勇者様をふっちゃうメス・・・・・いえ、女なんぞ気にしなくていいんですよ!

  
 

ニャーン、ゴロゴロ。

  

何・・・・・お前、慰めてくれてるの?
優しいなあ・・・・・じゃあ、今晩付き合ってくれる?

ネコ

え!?そ、そんな・・・・・あたくし、ネコなんですよ!

今日は、月も綺麗だし・・・・一杯やりたい気分でさ。
晩酌、つきあってもらっちゃおうかな、なんて。

ネコ

アハハハ・・・・ですよねー。

  
 

ニャン。

  

(餌皿に注いで)・・・・どうぞ。

ネコ

わあ、ミルク・・・・・しかも特濃ってやつじゃないですか、これ!

じゃあ、秋の夜長に乾杯。

ネコ

かんぱーい。

  
 

ニャン。男が思わず笑うと、ネコもつられて笑う。

  
  
  
おわり。