918話(2013年11月2日 ON AIR)
「走る」

作・ピンク地底人3号

  
 

走る音がする。

  

いつからだろう。私が走りを止められなくなったのは・・・

店員の声

いらっしゃいませー。ご注文お決まりでしたら、マイクに向かってどうぞー。

テリヤキバーガーのセット。

店員の声

ポテトはプラス100円でLサイズにすることができますが。

いやMで。

店員の声

飲み物はいかが致しますか?

ウーロン茶。

店員の声

今、チキンナゲットが100円となっておりますが、いかが致しますか。

いらない。

店員の声

今、フライドチキンの50円セールをしております。いかが致しますか。

いらない。

店員の声

かしこまりましたー。それでは前のほうへどうぞー。

  
 

  
店員

・・・何してんすか?

いいからテリヤキバーガーのセット。

店員

あの、ここドライブスルーっすけど

知ってるよ。

店員

なんで車、乗ってないんすか?

免許持ってないから。

店員

・・・そうなんすか。

  
 

  
店員

え?なんで走ってるんすか?

おまえに関係ある?

店員

関係はないっすけど、明らかおかしくないっすか。足、止めてくださいよ。

止まらないよ。

店員

どうやって食うんすか?

走りながら食うんだよ。

店員

難しくないっすか。

もう慣れた。

店員

ちょっと待ってください。走りながら?え?
ハンバーガーでしょ?ポテトでしょ?ウーロン茶でしょ?

いいからよこせよ。

店員

おかしいでしょ。明らかに。

何もおかしくない。お前は走ったことがないのか。

店員

走ったことはありますけど、走り続けたことはないっすよ。
ましてや走りながらドライブスルーに入ったことなんて。

馬鹿野郎!死ぬまで人生走り抜かないどうする!?立ち止まるな!若者よ!走れ!若者よ!おまえ、そんなところで何やってる?

店員

え?何って・・・バイトっすけど。

バイト?小さい箱の中で立ち止まってバイトだと?

店員

別に立ち止まってるわけじゃ・・・

俺にはお前が立ち止まってるように見えるね!おまえに夢はないのか?

店員

いや、ありますよ。夢ぐらい。

言ってみろ!

店員

いやその・・・僕、バンドマンで・・・

(遮り)武道館をいっぱいにしたいって?無理だね!

店員

な、なんだと!

だって、おまえ、立ち止まってるもん!!

店員

バンドマンにも金が必要なんだよ!

言い訳にしか聞こえないね!武道館をいっぱいにしたけりゃ立ち止まるな!走り続けろ!じゃあな!テリヤキバーガーのセットはもらっていくぜ!

店員

あ!ちょっと!!お金!

  
 

男が走り去る音がする。

  
店員

僕はその走り続ける男を追いかけた。
あいつはとんでもない速さで国道を走った。
あいつはまったく止まる気配がなかった。でも逃がすわけにはいかない。
お金を払ってもらわないと・・・

そして月日が流れた。
僕は走ることの大切さを知った。
夢をかなえたければ立ち止まってはいけない。
僕は走り続けなければならないんだ。夢をかなえるために・・・
あれ?僕の夢ってなんだっけ?あれ?いつからだろう?
僕が走りを止められなくなったのは・・・
まぁいっか!!大切なのは走り続けることなんだから!

男の声

いらっしゃいませー。ご注文お決まりでしたら、マイクに向かってどうぞー。

店員

テリヤキバーガーのセット。

男の声

夢はプラス100円でLサイズにすることができますが。

店員

LLサイズでよろしく!!

  
  
終わり。