926話(2013年12月28日 ON AIR)
「カンチョレ・ブッキ」

作・益山貴司

  
 

フクロウの声が響く真夜中の山中。釘を打つ音が聞こえる。

  

おいおいおいおい!ほんとにいんのかよ

  
 

男、ひっそりとヤブの中から林の中をのぞく。

  

うわー・・・。マジでワラ人形に釘打ってるよ。きっつー

  
 

携帯電話が鳴る。釘を打つ音、ぴたりととまる。
男、あわてて、電話に出る。

  

ばかばか!見つかっちゃうだろ!いたよ!いたんだよ、ほんとに!
おお!自分の携帯チェックしてるわ、助かったー!

  
 

再び釘を打つ音。

  

ちゃんと白い服来て、頭に火のついたろうそくまで刺してるよ
やべえー、半端ねえよ、これ

  
 

釘を打つ音、激しくなる。

  

ヒートアップして来たー!聞こえんだろ、木を打つ音が・・・ってバカ!
丑の刻参りのお姉さんだよ!

あちちちち!

えー!頭のろうそくがおちて髪の毛に引火しちゃってるよ!

あつ!あつ!

転げ回ってるよ!やばいやばい!

  
 

男、ヤブから飛び出して女の頭の火の粉を払う。

  

ちょっと、大丈夫ですか!

す、すいません

自分が燃えちゃったら意味ないですよ

ほんとですね

あぶないなあ

あの、見てたんですか?

いや、まあ、たまたま通りかかっただけです

私がなにしてるか知ってるんですか?

え?あれ、あれでしょ。小鳥のために巣箱打ち付けてるんでしょ

はあ

こんな真夜中にご苦労様です。それじゃ・・・

あの、ほんとに見てないんですよね

はい

見られると、やばいんで、私

え?

呪い返しにあっちゃうんで

なんの話ですか?ぼく、キノコ狩りに来てて・・・

あれのどこが小鳥の巣箱なんですか?

ああ、フィンランドの方ではワラを使った巣箱があるそうですよ

へえ

デンマークの一部地方でも行われているそうで・・・

  
 

携帯が鳴り出す。

  

携帯、なってますよ

あ、はい・・・(携帯に出る)なに?え?写メはどうしたかって?むりむり・・・
罰金?五万?・・・分かったよ・・・(女に)すいません

はい

写メとらせてもらっていいですか?

珍しい巣箱だから

はあ

暗いんで、出来ればもう一度、
ろうそくに火をつけてもらえると助かるんですけど

いやです

そんなこと言わずに、ついでに作者のお姉さんもご一緒に

さっき、自分が燃えちゃったら意味ないって言いましたよね

言ったかな?

なにが意味ないんですか?

フィンランドではね、ワラの巣箱に小鳥を誘い込んで、そのまま燃やして
食うんですよ。カンチョレ・ブッキって言って
フィンランド語で小鳥の丸焼きって・・・

写メ、とっていいですよ

ほんとっすか

その代わり、私もアナタを撮らせてください

  
 

女、男の写メを撮る。

  

それ、どうするんですか?

プリントするんです

して?

新しい巣箱作るんです

ワラ製の?

ええ

真夜中に?

午前二時に

ぼくのために

あなたのためにカンチョレ・ブッキつくります

  
  
(了)