928話(2014年1月11日 ON AIR)
「染み」

作・ピンク地底人3号

徹夜明けにコインランドリーへ向かった。俺の家には洗濯機がない。

  
 

コインランドリーの入口の音。

  

洗濯物を放り込み、ベンチで座っていると猛烈な睡魔に襲われた。
目が覚めると、開かれた洗濯機の蓋から女の手が伸びている。

  

こんばんは。

・・・こんばんは。

そんなところで寝て大丈夫?

ああ・・・

徹夜なんてするもんじゃないよ。もう若くないんだから。

いや、時間がなくて。

そんなにバラすの時間がかかったの?

ああ・・・

私、最後までめんどくさかった?

ああ・・・

ごめんね。めんどくさくて。

いや。俺のほうこそすまん。

もう遅いよー。

おまえ、何してんの?

え?何してんだろうね?わかんない。

そっか。

自首するの?

いや、まだ決めてない。

早く決めたほうがいいよ。
するならする、しないならしないで早く捨てないと。

そうだな。どこに捨てられたい?

どこでもいいよ。もう自分の身体には興味がないんだ。

へぇ・・・あのさ。じゃあもう自分の服にも興味ない?
汚しちゃったからわざわざ洗濯機にかけてんだけど。
気に入ってたじゃん。あの服。

あー・・・うん。興味ないかな。

そっか・・・

ごめんね。気使ってくれて。でもあの染みは取れないと思うよ。

  
 

ピーッと洗濯が完了した音がする。

  

目が覚めると洗濯はとうの昔に終わっていた。

  
 

コインランドリーの入口の音。
女が入ってくる。

  

いつまで洗濯してんのよ?

・・・ああ。

どうしたの?呆けた顔して?

いや。寝てたみたい。

はぁ?バカじゃないの?

ああ・・・

セーターの染み取れた?

いや、まだ確認してない。

  
 

女は洗濯機の蓋をあけて、セーターを取り出す。

  

あ。綺麗になってる。よかったねー。
取れなかったら一生私の機嫌、治んなかったと思うよ。

あのセーター、大切にしてたもんな。

まぁ取れたし、ゆるしてあげるよ。私も言いすぎたと思うし。ごめんね。

なぁ?

何?

・・・ついてた染みって何の染み?

  
  
終わり