949話(2014年6月7日 ON AIR)
「ウォッシュレット2014」

作・ピンク地底人3号

  
 

飛行機内。
ごぉぉぉぉっと飛行機のエンジン音が響いている。

  

(カタコトで)おかしいですね。

え?

到着時間が1時間も遅れてます。それなのにアナウンスもないし・・・

そういえばそうですね、気が付きませんでした。

  
 

  

日本の方ですか?

ええ。

私、ルーシーと言います。

あ、林です。どうも。

日本にお帰りですか?

はい。ニューヨークに仕事に行ってまして、その帰りです。

そうですか。

日本語、お上手ですね。

本当ですか。ありがとうございます。私はアッパーイーストで日本文化で働いているのです。

ああ。だからですね。

でも日本語ばかり喋っていて、逆に英語がカタコトです。困った。困った。
明日東京でシンポジウムがあるんです。その参加です。でもシンポジウムは退屈です。
それよりそのあと友達と行く歌舞伎が楽しみです。私、歌舞伎がとても好きです。
歌舞伎の人たちをニューヨークに呼んだりもしてます。

それは凄いですね。

私は凄くないです。凄いのは歌舞伎です。
ところでニューヨークはどうでしたか?観光たくさんしましたか?

それが忙しくて全然できなくて。唯一行ったのが、あそこですね。

待ってください。私当てます。Moma?

違います。

Met?

違います。

Oh! Broadway! that it?

ノー。あそこです。最近建て替えられた・・・

Ah…ミナマデイワンデヨロシイ。

すごい日本語知ってますね。

大きかったでしょう?

はい。上を見上げると空に吸い込まれるような、そんな感じになります。

I know I know….

あそこまで高いともはや人の力を超えているというか。

色んなことが人の力を超えています。本当にたくさんたくさん。
でも一度限界が超えるともう後には戻れないんです。
あれを立て直したのは私たちではありません。もっと別の「何か」です・・・Oh!!思い出した。後には戻れないで思い出した。あなた、ウォッシュレット知ってますか?

え?トイレの?

そうです。あれはどこで買えますか。
私、仕事場のウォッシュレットでオシリがカイハツされてしまって、
もはやあれなしではいられないのです。
ウォッシュレットの文化、アメリカにも絶対必要です。

たぶん電気屋に行けば買えますよ。

あなた、ウォッシュレットなしの生活、耐えられますか?無理でしょう?ね?

えっと、はい。

でしょう?一度、ウォッシュレット当たり前と思ったらそれまでです。
それは他のこととも一緒です。いいですか。当たり前、それ、とってもとっても怖いこと。You understan?

あー・・・イエェス。アイアンダースタン。

Good boy…..Good boy…

  
 

エンジン音が大きくなる。

  
  
  
終わり。