965話(2014年9月27日 ON AIR)
「小さくなって・・・」

作・ピンク地底人3号

ある日、レンタルビデオ屋にDVDを借りにいった時のこと。
店頭に置いてるガチャガチャに目がいった。
奇妙だったのはそれが一体何のガチャガチャなのか、ポップには一切書かれてなかったということ。
私は興味本位でコインを入れて回してみた。

  
 

がちゃりとカプセルが出てくる音がする。

  

出てきたカプセルには小さい男が入っていた。

  

(カプセル越しなので声がくぐもっている)助けてください!

・・・小人さん?

違います。ちゃんとした人間です!変な薬を飲まされてそれで・・・
とにかくお願いです。助けてください。

  

なぜあのとき、私は彼の願いを聞き入れてあげなかったのだろう。
私の中にある一番残酷な部分が急に顔を出したようだった。
私は家へ帰るとカプセルに小さな穴を開けた。そこへポテトチップスのかけらを入れてやる。

  

どうしてカプセルを開けてくれないんですか?

ん・・・なんでだろう。お腹すいてないの?食べなよ。

僕はペットでも虫でもありません。

うん。知ってる。

僕のこと、どうするつもりですか?

わかんない。

このまま一生、僕をここに閉じ込めておくつもりですか?

わかんない。

お願いです。開けてください。

それよりさ、小さくなった経緯教えてよ。変な薬とか言ってたよね?

・・・教えたら出してくれますか?

わかんないけど、とりあえず私は知りたいかな。

・・・大学病院のバイトだったんです。
病院側が用意した部屋で一週間、試験段階の薬を飲み続けるっていう・・・
何の薬かは全く知らされてませんでした。もちろん不安ではあったんですが、
でも僕、あの時どうしてもお金が必要で背に腹は変えられない感じで・・・
何もない部屋だったので最初は気がつかなかったんですけど、
ある日、部屋が広がってるような気がして・・・
でも部屋が広がってるんじゃなくて、自分が小さくなってるって気がついた時にはもう遅かったです。
最終的にはマウス用のカゴに入れられて・・・その後のことは覚えてません。

  

その日から私と小さい男の共同生活が始まった。

  

出してほしかったら、必ず私が仕事へ出かける時は「行ってらっしゃい」って言って。
私が仕事から帰ってきたら必ず「おかえりなさい」と言って。

  

「いってらっしゃい」

「いってきます」

「お帰りなさい」

「ただいま」

  

そんな日々が一ヶ月続いた。
男も私も気がついていたが、男はいまだに小さくなり続けているようだった。
声もどんどん小さくなっていく。
ある日、家へ帰ると、「ただいま」といっても返事がない。カプセルは空っぽになっていた。

  

男は綺麗さっぱり消えてしまったのだろうか。それとも小さすぎて私には見えないだけだだろうか。
今でも私はカプセルを開けていない。
今後、開けるつもりも一切、ない。

  
  
終わり