969話(2014年10月25日 ON AIR)
「冬の夜」

作・深津篤史(桃園会)

  
 

風の音
ライターをつける

  

つけんといて

火い

けど、真っ暗やんか

ええやん

きれいな

何が

何がって ほら

消して

うん

  
 

ライターしまる

  

電気いつつくんやろ

なんか 思いだすなあ

何を

いろいろ

  
 

やや間 風の音のみ

  

おい

  
 

だしぬけに携帯電話のベル

でたらいいや

うん

  
 

男は携帯電話を切った

  

何 思い出すん

(少し笑って)真っ暗やと 色々うかんでくる
目えつぶった時みたいに

どんな

手え握ったまんま ずっと座ってた時のこと
公園で夜明かしした時のこと
帰りの電車で窓に映った2人のこと それから

写真みたいにな 思いだすねん 一瞬一瞬
想像してみて

せやから想像してみて 私は

あれ? あれ? おい 今 どこに

  
 

女の笑い声

  
2人

あっ

  
 

雷の音

  

そんなとこにおったんか

見えた

うん 見えた

焼き付いたやろ

(少し笑って)お前 色白いな

ふつうやで

そうか

雷のせいや

  
 

窓を開ける音 どって風が吹き込んでくる

  

あっ こら

雨 降ってへんよ

  
 

風の鳴る音 やや間 しばらくして女はまどを閉めた

  

おい…

ごおお ごおお ごおお

子供か お前

もうすぐ30

だいぶ先やろ

そんなこと ない

うん

電気つかへんかたらええのに

なんで

ついてほしい?

ええと

なんか 夢見がち

  
 

男少し笑った

  

真っ暗やから?

うん

散歩にいこ

え?

こうやって手 手は?
(探り合う間)そう 手えつないでな
足のばしてみて

足って…

想像して 足がするするって伸びていくねん
どんどん伸びて伸びて 今 信号のとこ
角を曲がって タバコの自販機も真っ暗 コンビニも真っ暗

どこ行くん?

暗いとこ 電気つても暗いとこ 山とか 森とか

それから

着いてから考える

うん

今 どのへん?

ええと あっ……

目え つぶって

うん 電気消そか

ええねん このまま じっとしてよ もう少しだけそんで

目 覚めるねん うちら ちょっとの間ねてただけ
夢 みてたんよ なあ そうしょ

  
 

風の音