979話(2015年1月3日 ON AIR)
「みくじみくじひつじみくじ」

作・Sarah

  
 

2015年、正月。男が近所の神社に初詣に来ている。
参拝の長い行列は、なかなか進まない。

  

・・あ.、寒ぃ。やっぱりこっちのコートじゃなくて、あっちのダウンを着てくるべきだったかな・・
帰りに甘酒でも買って帰るか・・あ、そうだ賽銭、賽銭っと

  
 

ポケットから財布を取り出し中身を確認する。

  

ええっと・・ここは奮発して100円くらいは・・いや、待てよ。
甘酒買うならこの小銭の300円は残しときたいし・・ま、いっか。いつも通り、5円で

  
 

ようやく男の順番が来て、男は手にしていた5円玉を投げ、鈴をならすと手を叩く。

  

えーっと、今年こそ、どうか俺の懐があったかくなりますように。
そしたら来年はこんなにケチケチせずに賽銭500円くらい出しますので、よろしく・・・・と、
まぁ、こんなもんかな

  
 

男は、参拝が終わると列から外れる。ふと横に、みくじがあるのに気がつく。

  

ん?初みくじ300円・・そういやここ数年引いてないな

  
 

男は財布の中身をもう一度確かめる。

  

よし、甘酒は我慢して運試ししてみるか。すいませーん

  
 

男は残していた300円を渡し、みくじを引く。

  

5番。おっ、これはなんだかご縁がありそうじゃないか?あ、どうも

  
 

みくじ箋を受け取る男。

  

大吉、来い!来い!・・ん?なんだこりゃ・・トメ吉??

  
 

突然、みくじ箋から、もわんもわんと白い煙が出て何かの形を作りはじめる。

  

わぁぁぁ、なんだなんだなんだ?!

  
 

メェェェ.っと鳴き声をあげて煙は羊の形になる。

  
トメ吉

トメ吉を呼んだのは、あなたですか?

な、なんだ?!え?羊??

トメ吉

ふーやれやれ

な、なんだ

トメ吉

このトメ吉をそんじょそこらの羊と一緒にしないでいただきたいですねぇ

  
 

メェメェと怒るトメ吉。

  

俺はただ、おみくじを引いただけでお前みたいな変な羊を呼び出した覚えは・・

トメ吉

変?!全く失礼なお方だ。だから引いたでしょ、私のおみくじを

  

  
 

男はみくじ箋を見る。

  
トメ吉

そう!大吉、吉、中吉、小吉、半吉、トメ吉、末吉、凶、半凶・・

ちょっと待った、今、途中に変なの入ってたから!しかもだいぶ微妙な位置に!

トメ吉

まぁ細かいことはお気になさらずに。これも何かのご縁です。よろしくお願いしますね

よろしくって?

トメ吉

あなたの引かれたおみくじを読んでご覧なさいな

え、えっと『商売、可も無く、不可も無く。病気、風邪は年内に2.3回引く。
失せもの、みつかったりみつからなかったり』わーほんとに微妙

トメ吉

そこじゃなくて!もっと上の

上・・?『願い事、叶う』?

トメ吉

そう!あなたの願いごとを今から叶えて差し上げます

  
 

ひと際大きな鳴き声をあげて急に男に飛びかかり、ぴたりとくっつくトメ吉。

  

わぁ、なにすんだ!おい、やめろ、俺にくっつくな、お、おい!

  
 

今後は羊から煙がもわんもわんと出て来て、また別の形を作り出す。
男が手を振って、羊を追い払おうとしていると、いつの間にかトメ吉は消えている。

  

あ、あれ?羊?と、トメ吉??いない・・うわぁ俺、いつの間に半纏なんて着てるんだ?!
しかもなんか微妙な羊のキャラクター柄!

  
 

風が吹くが、半纏のおかげで心なしか先ほどよりあたたかい。

  

いや、確かにあったかいけどさ、『懐をあったかく』の意味違うし・・甘酒にしときゃあ良かったかな・・

  
 

男が半纏についているタグに気づく。

  

・・ん?ウール100パーセント。洗濯機不可、手洗いで優しく・・?よろしくお願いしますってこのことか・・

  
 

男は新年の挨拶を交わす人たちの横をぼんやりと歩きながら、
微妙な柄の半纏を着たまま微妙な表情で家路につく。

  
  
  
END