983話(2015年1月31日 ON AIR)
「アラーム」

作・益山貴司

  
 

携帯のアラームが鳴る。

  

あ、もうこんな時間か(切る)

ねえ、たっくんきいてるの?

ごめん、そろそろ帰らなきゃ

なんのアラームなのよ

もうすぐ終電だよってお知らせ

そんなのどうでもいいじゃない。もっと話がしたいの

悪いけどさ、明日も会社だから帰んなきゃ

今、すんごい大切な話してるよね、私たち

京子、ごめん。俺たちもう、無理だよ

そんな・・・

  
 

アラームが再び鳴る。

  

うるさい!

(切って)もう、行くね

待って!

ほんと、ごめん。合鍵はまた、今度返してくれればいいから

今度なんてないくせに

ごめん

  
 



アラームが鳴る。

  

(目を覚まし)なんだよ、こんな時間に・・・
(画面を見て)ドラマの時間?
俺、こんなアラームセットしたかな?

  
 

男、テレビをつけて、ザッピング。
ドラマのチャンネルにあたる。

  

見たことあんな、このドラマ、なんだっけ・・・・

  
 

と、今度は携帯が鳴る。

  

もしもし?

私だけど

知ってるよ

今、あのドラマの再放送見てるんだ

あのドラマ?

覚えてないの?昔、二人でよく見たやつ

ああ、それで見覚えあるのか。俺も見てるよ、今

ほんと!?偶然!

まあな

これ見てた頃、なつかしいね。二人でベッドにねっころがって見てた・・・

あのさあ、ちょっともう、眠いから切るね

ドラマ見ながらしゃべろうよ

無理だから、ほんと

  
 

男、携帯を切り、テレビも切る。

  

はあ・・・。なんなんだよ、一体。変な電話かけてくんなよな

  
 

男、頭から布団をかぶる。

アラームが鳴る。

  

今度はなんなんだよ!寝かせてくれよ!・・・・
ミルクの時間?はあ?

  
 

台所の方でレンジのちんという音がする。

  

え?なに?誰かいんの?台所?

  
 

男、言いながら台所に行き、レンジを開け、カップを手に取る。

  

ホットミルク・・・あいつがいつも作ってくれてた・・・

  
 

アラームが鳴る。

  

うわあ!・・・(画面を読み)帰宅の時間・・・(切る)
どういうことだよ、これ・・・・

  
 

玄関の扉が開く音。

  

ただいま

きょ、京子・・・・

遅くなってごめんね

なにしに・・・

  
 

アラームが鳴る。

  

わ!

アラーム、鳴ってるよ

さよならの時間・・・・

ばいばい、たっくん

やめろ、やめろ、やめろーーー!

  
 

男の叫び声をかき消すように、アラームが鳴り響く。

  
  
  
(了)