ラヴィーナ&メゾン STORY FOR TWO クリスマススペシャル2016
“物語のはじまりは…”
第3話(2016年12月23日 ON AIR)
「駐車場のトナカイは寒さに震えない」

作・福谷圭祐(匿名劇壇)

キャスト あゆみ・・・十歳。 平野 舞(維新派)
  たくと・・・十二歳。 坂本隆太朗(がっかりアバター)
  ママ・・・三十代女性。 日枝美香L(超人予備校)
  パパ・・・四十代男性。 森澤匡晴(スクエア)
  サンタ・・・三十代男性。 谷屋俊輔(ステージタイガー)
えーと、桜木様のお宅は、枕元配達コースでよろしかったですかね。

  
 

クリスマスイブの夜。あゆみとたくとが笑い合っている中、

  
たくと

あゆみ、お前、サンタクロースなんて未だに信じてるのかよ。

あゆみ

いるもん。サンタさんは、いるもん。

たくと

ばっかでー。サンタクロースなんて、現実にはいないんだよ。

あゆみ

いるもん!

たくと

いない。

あゆみ

いるもん!

たくと

いない。

あゆみ

あーん! ママー! お兄ちゃんがいじわるしてくるー!

ママ

コラ、たくと。サンタクロースは、本当にいるのよ。

たくと

へっ。ママもパパも、いつまでやってるんだか。とっくに気づいてるっつーの。

パパ

たくと。サンタクロースは、いるんだぞ。

たくと

はいはい。良かったな、あゆみ。じゃ、おやすみー。

あゆみ

べー、だ! お兄ちゃんなんて、大っ嫌い!

ママ

ほら、あゆみも。おやすみなさい。

あゆみ

うん。おやすみ。そう言ってあたしは、期待に胸を膨らませながらベッドに入った。今日はクリスマス・イブ。もちろん、待っているのはサンタクロース。
あたしは、眠った。むにゃむにゃむにゃ……。

  
 

しゃんしゃんしゃんと鈴の音が聞こえる。

  
ママ

あら、あなた、来たみたいよ。

パパ

お、そうか。早いな。

サンタ

メリークリスマス! サンタクロースでーす。

ママ

はいはいはい。(扉を開ける)

サンタ

あ、奥さん、どうも。

ママ

いつもありがとうございます。

サンタ

いえいえ、えーっと、トナカイ、どこ停めさせてもらいましょ?

ママ

あ、あなた。

パパ

あ、じゃあこっちの駐車場に。

サンタ

どうも。

パパ

こっちです。はい、オーライ。オーライ。

  
 

しゃんしゃんしゃん。

  
パパ

オーライ、オーライ。はい、ストップー。

サンタ

どうも、ありがとうございます。

パパ

いやー、今日も大荷物で。

サンタ

毎年のことですからね。慣れたもんですよ。

ママ

ええ、お願いします。

サンタ

かしこまりました。(伝票のようなものを見ながら)あ、おやおや 、
お兄ちゃんのたくと君、もう十二歳ですか。

ママ

ええ、なんだかもうすっかりませちゃって。サンタクロースさんに頼むのも、
今年で最後になってしまうかもしれません。

サンタ

ありゃりゃー。

パパ

ま、娘はまだ信じ切っていますから。

サンタ

そりゃあ良かった。えー、っとそれじゃあ、たくと君が右の部屋で、
あゆみちゃんが左の部屋になりますかね。

ママ

ええ。

サンタ

オプションのチラ見せはどうなさいます?

パパ

チラ見せ?

サンタ

枕元にプレゼントを置いたあと、
ちょっと物音を立てて後姿を見せるっていうサービスです。

パパ

ははあ。

サンタ

結構、最近疑い始めたお子さんなんかには人気のサービスですよ。

ママ

あら、じゃあ、たくとの部屋、チラ見せお願いします。

サンタ

かしこまりました、チラ見せありで。
それじゃあえっと、商品の方だけ確認させてください。注文番号Aの11468、
『二人はパラボラ』のボラのフィギュアがあゆみちゃん、たくとくんが
注文番号Fの563、デザートイーグル50口径シルバーのエアガンですね。

パパ

うん、間違いないよな。

ママ

ええ、大丈夫です。

サンタ

ありがとうございます。それじゃお会計、8490円になります。

パパ

カードって使えましたっけ?

サンタ

すみません、現金でお願いします。ごめんなさい。

パパ

じゃあ、一万円からで。

サンタ

どうも、じゃあ、1510円のお返しです。

ママ

大変でしょう、お釣り、持ち歩くのも。

サンタ

ええ、ほんとにねえ。なんとかしてくれって毎年会議にはなるんですけど。

ママ

あらー。

サンタ

それじゃ、上がらせて頂きます。

パパ

お願いします。

  
 

サンタ、ゆっくり階段を上る。
たくとの部屋を開ける。たくと、ぐっすり眠っている。

  
たくと

すぴー。すぴー。サンタなんて、いないやい。むにゃむにゃ。

サンタ

ほっほっほ。

  
 

サンタ、枕元に商品を置く。

  
サンタ

よいしょっと。……さて。おっと!

  
 

サンタ、タンスに足をぶつける。

  
たくと

ん? なんだ……? 誰? 赤い服……? うーん…むにゃむにゃ……。

サンタ

ほっほっほ。

  
 

サンタ、扉を閉め、あゆみの部屋へ。

  
サンタ

さて、次はあゆみちゃん。

  
 

扉をあける。

  
サンタ

ほっほっほ。ほ!?

あゆみ

おじさん、何してんの。

サンタ

あ、あ。

あゆみ

おじさん、誰? 何?

サンタ

……ほっほっほ、サンタクロースだよ。

あゆみ

こんなのじゃない。

サンタ

え?

あゆみ

サンタクロースはこんなのじゃない!

サンタ

ちょ、ちょっと、あゆみちゃん。

あゆみ

あんたなんか、全然サンタクロースじゃない!

サンタ

あゆみちゃん!

あゆみ

全部聴こえてたよ! 全部聴こえてたんだから!

サンタ

ちょっと、いや。

あゆみ

もっと、夢のある存在だと思ってたのに!

サンタ

夢があるよ。サンタには夢があるよ。ほっほっほ。

あゆみ

ほっほっほとか、うるせえよ!

サンタ

いや、あの。

あゆみ

トナカイをオーライとか言って停めるなよ! トラックかよ!

サンタ

いや。

あゆみ

なんで普通に駐車場にトナカイが停まってんだよ! 原付かよ。

サンタ

いや、原付じゃないんだけど。

あゆみ

わかってるよ!

サンタ

あの。

あゆみ

なんだチラ見せサービスって! いかがわしい店かよ!
いかかがわしい店みたいな用語使ってんじゃねえよ!

サンタ

いや、これはいかがわしいとかじゃなくて、

あゆみ

最悪なのが、一番最悪なのがもう、現金のやり取りしてんじゃねーよ!
頼むぜサンタクロース! 現金のやり取り、頼むぜサンタクロース!

サンタ

いや、うちも電子マネー取引の制度は設けたいんだけど、

あゆみ

電子マネーとか頼むから一生言わないでくれ。

  
 

パパとママ、階段を駆け上がってくる。

  
パパ

どうしましたか、あっ。

ママ

あゆみ。

あゆみ

パパ、ママ。

パパ

あゆみ、起きちゃったのか。

あゆみ

起きるだろそりゃ。あんだけオーライオーライ言ってりゃ起きるだろ。

ママ

あゆみ、この人、本物のサンタクロースなのよ。

あゆみ

本物?

ママ

そう、本物の、フィンランドの本店から異動してきた、

あゆみ

本店から異動してきたとかマジでやめてよ、ママ!

ママ

あゆみ……。

あゆみ

本物の概念が揺らぐよ、ママ。

パパ

あゆみ。

サンタ

あの…、プレゼントです。

あゆみ

とうとう手渡ししちゃったよ。

  
 

あゆみ、プレゼントを開ける。

  
あゆみ

なにこれ。

サンタ

『二人はパラボラ』の、ボラのフィギュアです。

あゆみ

あたしが欲しかったの、パラのほうなんだけど。

サンタ

え?

あゆみ

もう、ええ? ここ間違えたら絶対ダメでしょ。
大体、ボラな訳ないじゃん! 言葉の響きでわかるじゃん! もう、ああん!

パパ

ごめん、あゆみ。サンタさんは悪くない、それはパパのミスだから。

ママ

そうよ、あゆみ。ごめんね。サンタさんは悪くないの、パパの発注ミス。

あゆみ

発注ミスとか……、勘弁してくれ。表現には気をつけてくれ……。

パパ

ごめんよ、あゆみ。

ママ

ごめんね。

サンタ

なんか、すみませんでした。

あゆみ

いいよ、もう、帰って。とりあえず、今までどうもありがとう。

サンタ

はい。じゃあ、あの、……帰ります。

パパ

ええ……。

サンタ

あ、あの、一応桜木さんのお宅はバレ保険には入ってますので、
もしあれでしたら、こちらに請求してください。

ママ

はい。

あゆみ

お前今、よくそういうやり取りができるな。

サンタ

失礼します。

  
 

しゃんしゃんしゃん。

  
あゆみ

クオリティが低い。

パパ

悪かった、あゆみ。

あゆみ

全体的に、仕事が雑なのよ。

ママ

ごめんね、あゆみ。

あゆみ

こんなのがサンタクロースだなんて、あたし、認めない。

ママ

そうよね。

あゆみ

あたしが作る。

パパ

え?

あゆみ

もっと、ハイクオリティで、サービスが行き届いた、
本物のサンタクロースをあたしが作る。もう夢見てなんかいられない。
夢なんて、こんなにくだらないものだったんだ。あたしが作ってやる。
夢よりも夢のある、最高の現実をあたしが作ってやる。

パパ

あゆみ。

あゆみ

パパ、今年のお年玉は百万円ちょうだい。

パパ

ええ?

あゆみ

それを資本金にして、もっと、すっごいちゃんとした、
最高のサンタクロース派遣会社をあたしが立ち上げる。
あんなところで寒さに震えるトナカイが生まれないように。それじゃ、おやすみ。

  
 

あゆみ、扉を閉める。

  
パパ

ママ……、こんなことになるなんてな。

ママ

ええ……。でも、あゆみったら。

パパ

ん?

ママ

立派に育ったと思わない?

パパ

そう、かなあ?

  
あゆみ

あたしはその夜、考えた。トナカイは駐車場には停めないようにしよう。
プレゼントは、カタログで注文させるんじゃなくて、
子どもからの手紙を直接届けてもらおう。チラ見せなんて持ってのほか、
絶対に見られないように、派遣スタッフには訓練を積んでもらう。
現金のやり取りは絶対にNG。大きな会社にスポンサーについてもらって、
家庭からお金をもらうような仕組みにはしないようにしよう……
そして、いつの間にか、朝になっていた。

  
たくと

おい! あゆみ! あゆみったら!

あゆみ

お兄ちゃん、どうしたの。

たくと

お前、昨日、見たか?

あゆみ

え?

たくと

サンタクロースだよ! 赤い服を着た! 俺、見ちゃったんだ!
ちらっと、見えちゃったんだ! すげえぜ! ほんとにいるんだ、サンタクロース!

あゆみ

……そう。

たくと

おおーい! なんだよ、あゆみー! おおーい!!

あゆみ

……チラ見せサービスはアリにしてもいいかもしれない。

たくと

は?

  
あゆみ

もちろん、名称は変更するとして。と、あたしは思った。
この物語は、あたしが夢を現実にするまでの物語。夢を現実に変える物語。
必ず、と、あたしは誓った。

  
  
END