ラヴィーナ&メゾン STORY FOR TWO クリスマススペシャル2017
“天使が通る”
第3話(2017年12月23日 ON AIR)

「沿線出身の漫画家が何周年とかで」

作・合田団地
キャスト
女1 西分綾香(壱劇屋)
女2 のたにかな子
福谷圭祐(匿名劇壇)
――電車のドアが閉まり、出発する。
――ホームのベンチ。
あーあ、行ってもうたで
うん
なんで乗らんかったん?
私は別にええねん
あ、そうなんや
あんたこそ乗らんでよかったん?
私もええねん。なんか、あんたに見送られんの嫌やねん
そっか
マジで、なんで乗れへんかったん? 先、行ってほしかったわ
あのさ、私と、ちゃんと喋ってくれへん?
なんで?
ちゃんと喋りたいから
ふーん。そうやって私のこと馬鹿にしてるんやろ
なんでそうなんの。全然馬鹿になんかしてへんやんか
あんたが私のこと馬鹿にしてへんのやったら、なんで私はあんたに馬鹿にされてるって思うの?
それは私にはなんでかわからへんけど
馬鹿にしてへんって言ってるけど、内心で私のこと馬鹿にしてるからちゃうん?
だからしてへんって
二人でいるときに私のこと笑ったりしてるんやろ。むかつくわあ
笑ってないって。なんでそんなに被害妄想強いねん
は、被害妄想?
被害妄想やんか。私、馬鹿にしたり、笑ったりしてへんのに
なに? 勝者の余裕?
違うって。大体さ、勝ち負けとかそういうんとは違うやん
それはあんたが勝ち取った側やからそう言えんねんって。
馬鹿にしてるつもりなくても、馬鹿にしてんねんって
してないって
大体、あんた、こっちのホームちゃうやん。いつもあっちのホームやんか。
なんなん? わざわざこっちのホーム来て自慢しに来たんちゃうん?
いつ私が自慢した?
まあ、いいけど
ごめん
ごめんってなんなん?
馬鹿にされてるって思ったんやったらごめん
別に謝らんでもいいけど
他にもいろいろ、ごめん
もうええって
ごめん。マジで許してほしい。それで、また前みたいに友達に戻ってほしい
だから別に謝らんでいいって。別にあんたが悪いことしたわけちゃうし。
私がただ女として魅力がなかっただけやから
ごめん
ほんま、ええって
別に、あんたに魅力ないと思わんけど。
私は、あんたは、すごい魅力的やと思うし、同級生やからこんなこと言うのも変やと思うけど、
変やし悔しいけど、私、あんたのことずっと憧れててんで
私が魅力的なんやったら、じゃあ、なんでこんなことなったん?
私も魅力的やけど、あんたはもっとずっと魅力的っていうことなん?
そんなん言いたかったわけちゃうわ
憧れんなや
え?
なに勝手に憧れてんねん。気持ち悪い
ごめん
私に憧れてるから、私の彼氏とったん?
え、違う。それは違う
でも、私のこと憧れてたんやったら、そうとしか考えられへん
それは違う。だって、あんたが付き合ってたって、私、知らんかったもん
絶対うそやん、そんなん
だって付き合ってたん、隠してたやんか
隠してたけど
隠してたんやから、知らんやんか
そんなん、でも、気付くやろ
ううん。気付けへんかったもん
それは、あんたの洞察力がないからやろ
ボーっとしてるからな、私。私の洞察力がなさすぎなんかもしれんけど、
でも、ほんまに気付けへんかったもん。私も付き合ってることはみんなに内緒にしとこうって、
そっちの方がなんか楽しいやんって言われて、みんなには内緒にしてて、
そしたら、あんたからなんでわからんけど避けられ始めて、
なんか避けられてんなあって思って、あの人に相談したら、
なんでやろうなあ、俺の元カノやからかなあって言われて、
そのとき初めて知って、私、びっくりしたんやから。
あんただって、あの人から別れ切り出されるまでは二股かけられてんの気付かんかったんやろ
そうやけど。また馬鹿にしてんの?
ほんまにあんたが付き合ってたって知らんかってんて。それは信じてほしい
わかった
だから、あんたのこと馬鹿にしてるとか、あんたから盗ってやろうとか、絶対ないから
わかった。わかってるから
ごめん
なんで謝んの? 謝るからおかしな感じになるんやんか
だって、どうせまた私のこと避けるやろ
避けへんわ。もう避ける理由がないやんか。あんたはなんにも悪くないってわかったのに
でも避けるやろ
無理矢理避けるってことはないと思うけど
避けられんの嫌やねん。あんたのこと好きやし、憧れてるから、避けられんの嫌やねん
だって無理やねんもん。馬鹿にしてないってわかってても、馬鹿にされてるし。
今もしんどいし。自分ではどうすることもできへんねんもん。
もう気持ちは許してるけど、どうしても許せへんねんもん、だって
無理なん?
うん
無理なんかあ
別れてくれたらわからへんけど
そっか
ごめん。私もあんなに仲良かったのに、
あんたともう仲良くできへんの悲しいけど、無理やねん。ごめん
そっか。わかった。悲しいわ、ほんま。もう、
なんで、あいつとあんたと別れるとき、二股の相手が私やって言ったんやろ。
言わんかったら今でも仲良くできたのに
ほんまや。あいつのせいや。
二股もかけるし、最悪や最悪。好きやってんけどな。忘れよ忘れよ。
あんなやつ、あんたにあげるわ。私は、もっといい彼氏見つけるし。
それで、あんたのことを、まだあんな最悪なやつの付き合ってるんやって、馬鹿にする。
絶対馬鹿にする。でも、嫌がらんといてな。おあいこやから
――電車が通過する。
なに、今の?
今のって?
電車の
あ、なんかラッピング電車の企画やってるらしいで。
なんか、沿線出身の漫画家の何周年記念とからしくて
あ、そうなんや。全然知らんかった
うそやん。いろんなところにポスターとかいっぱい張ってあったけどな
ぼーっとしてるからかな。全然気付かんかった
ぼーっとしすぎや
先頭車両のさ、天使のやつって、私、知らんやつやったわ。
他の車両のやつは大体わかったけど
好きなんや、あの漫画家
うん、けっこう持ってる
なんであの天使知らんの、代表作やのに
知らん
なんで知らんねん
ぼーっとしてるからかなあ
ぼーっとしてんの関係ないやろ
いや、ぼーっとしてるから代表作知らんねんって
今度貸してあげよっか?
うん、貸してや
わかった
あ、いや、いいや、やっぱり
え、あ、ほんま
うん。いいわ。せっかくやけど。ありがとう
わかった
――男、来る。
あー、ごめん。だいぶ待たせたやんな。学校出てくるときに後輩につかまっちゃって。あ
あ、ってなんやねん
よう
ようってなんやねん。あ、だから、あんた、こっちのホームにおったんや
そうやねん。今から買い物いくねん
え、二人で喋ってたん?
うん
二人で喋ってたんや
なんか悪い?
いや、別に悪くないけど。久し振りやな
別に久し振りちゃうやろ。毎日学校で顔合わせてんのに
でも、あれ以来喋ってないやん
なんか喋るようなことある?
ないか
ごめんな。私ら、ホームの向こう端に行くから。ごめんな
あのさ、自分ら脇甘くない?
は、なにが?
ホームで待ち合わせってなんなん? ばれるやん、そんなん。現に私と鉢合わせしてるし
どういうこと?
だから、みんなにばれるやん
あー、もういいかって思って
え、なにが?
みんなに隠すんも面倒くさくなってて、ばれてもいいかなあって思ってんねん
え、そうなんや
うん。なんかもう隠すん面倒くさいやん
え、ちょっと待ってや。私と付き合ってたときは、絶対秘密にしてたやんか
あのときはそれが楽しかったけど、今は別にええかなって思って
あ、そうなんや。もうええけど
じゃあ、私ら、向こう行くな
いや、いいよ。私が向こう行くから。ごめんな、なんか、気使わせて
ありがとうな。代わりに気使ってくれて
いや、気使うちゃうから。私が気まずいだけやから。気まずいから向こう行くだけやから。
じゃあ、デート楽しんできて。あ、やっぱり、あの天使の漫画貸して
あ、わかった
じゃあ、バイバイ
バイバイ
――1、立ち上がって歩き出す。
そうやっていつまでもブスってしてたら、全然かわいくないで
せっかくかわいいんやし、そんなブスっとしてたらもったいないで
うっさいわ。ほんまたち悪いな
――終わりです。