ラヴィーナ&メゾン STORY FOR TWO クリスマススペシャル2018
“言葉のカイロでホッカホカ ”
第2話(2018年12月23日 ON AIR)

「犯罪者が!」

作・福谷圭祐
キャスト
村上やよい 尾松由紀(超人予備校)
加藤卓巳 山田かつろう(売込隊ビーム)
岸田守 坂本隆太朗
クリスマスイブの夜。ここは女、村上の家。村上は眠りにつく寸前。
今夜はとなりに男、加藤も眠りにつく寸前。
村上
サンタクロース、来てくれるかな。
加藤
来てくれるよ、きっと。
村上
卓巳君のプレゼントじゃ、ダメなんだからね?
加藤
わかってるよ。俺のプレゼントはまた別。明日の朝は、きっと、サンタクロースからの
贈り物が、枕元に置いてあるよ。
村上
ふふ。サンタさんなんて、初めてだなぁ……。おやすみ。
加藤
おやすみ。
村上の寝息。窓の開く音。
窓から部屋に入ってくる男、岸田。床のきしみ。衣擦れ。
加藤、体を起こす。
岸田、動きを止める。
加藤
……うおっ。
岸田
うおっ。
加藤
えっ。
岸田
あっ。
加藤
えっ。
岸田
いや。
加藤
……え、ちょ、やば! やよい、起きて!
村上、めざめる。
村上
なに?
加藤
えっ、誰、なに? やばい!
岸田
あっ、ちょお、待って、
加藤
おい!
村上
……え、なに!? 誰?
加藤
え、誰、こいつ? やばい!
岸田
ちゃう、でかい声、やめて。
村上
なに、誰!?
加藤
わかんない、やばい!
岸田
いや、ちょ、
村上
誰!?
加藤
やばい! 誰こいつ!
村上
なに、誰!?
加藤
あ、逃げる、ちょっ!
加藤、逃げようとした岸田を捕まえる。
暴れるたび、クリスマスツリーに身体があたり、鈴が鳴る。
加藤
やばい、どうしよう! 怖い!
岸田
…放せて!
村上
誰!? なに!?
加藤
わかんない、やばい! ツリーが、クリスマスツリーが引っかかってる!
岸田
痛い、痛い! 痛い!
加藤
やばい! マジ、怖い!
村上
卓巳くん!
加藤
お前、なんだよ、お前!
村上
なに、そいつ!?
加藤
いや、わかんない!
村上
なに!? 誰!?
加藤
ちょ、やよい、警察、呼んで!
村上
警察?
加藤
警察、呼んで!
岸田
痛い、痛い! 放してて!
村上
え、警察呼ぶ?
加藤
お前、逃げんなよ!
岸田
逃げへんから、痛い痛い!
村上
警察、なんて呼ぶ?
加藤
警察、呼んで!
岸田
警察はあかんて!
村上
なに? 強盗?
加藤
わかんないけど!
村上
なんて言ったらいい? 強盗?
加藤
わかんない! お前、なに、強盗?
岸田
強盗ちゃうて。
加藤
強盗じゃないって!
村上
じゃあなに?
加藤
じゃあなんだよ、お前!
岸田
ちゃう、痛いねん。
村上
ストーカー?
加藤
お前、ストーカー?
岸田
ちゃうって。
加藤
違うって!
村上
え、じゃあ、なに? 誰?
加藤
なんなんだよ、お前!
村上
怖い!
岸田
あの、放して。
加藤
やよい、警察、早く!
村上
どういう、わかんない、なんて言ったらいい? 不審者?
加藤
不審者、不審者!
村上
不審者?
加藤
あの、住居の、あれだよ、不法の、
村上
なに?
加藤
犯罪だから。すでに! 住居の、不法の!
村上
うん。(携帯電話を手に取る)
加藤
呼んでいいから、警察!
村上
あ、もしもし。あの、えっと、今、家に、
岸田
サンタクロースやから、サンタクロースやから! サンタクロースやから!
加藤
は!?
岸田
サンタクロースやから!
村上
サンタクロース?
加藤
やばいって、こいつ。
岸田
ちが、やばないて。
加藤
マジ、やばい、怖いって。
村上
あの、今、家に、サンタクロースが。
加藤
やよい、不審者だって!
村上
あの、どうしよう、ごめんなさい、またかけなおします。
加藤
ええ!?
岸田
大丈夫。ちょお、あの、大丈夫やから。
村上
……サンタクロースなの?
岸田
サンタクロースやねん。
加藤
サンタクロースじゃないって!
岸田
ちょっと、あの、落ち着いて。もう、俺、体に力入れてへんから。抵抗してへんから。
一旦、ちょっと、放そう。
加藤
……放していい?
村上
卓巳君、こっち、こっち来たほうがいいよ。
加藤、岸田から離れ、村上のそばへ。
加藤
怖い、やばい、涙出てきた。
村上
大丈夫?
加藤
やばい。俺、怖くて泣いちゃったの、小学生以来だよ。
村上
卓巳君、ごめん、電話切っちゃった。
加藤
いや、ダメだよ、マジで。
村上
だって。
岸田
あの、大丈夫やから。
村上
はい。
岸田
サンタクロースやから、俺は。
加藤
やばいって。
岸田
ほっほっほ。
村上
でも「ほっほっほ」って、言ってるよ。
加藤
だからなんだとしか。
岸田
あの、一旦、部屋の電気つけて。落ち着こう。みんなで一回落ち着こう。
村上
電気、つけるね?
加藤
うん。
パチンと電気がつく。
村上
わ。
加藤
……うわ、やばいって。
岸田
やばないて。
加藤
マジ、成人男性じゃん。
岸田
いや。
加藤
いや、やばいって。成人男性じゃん。関西の。
村上
あの、サンタクロースの、服は?
岸田
サンタクロースの服は、あのー、デザインが変わってん。
村上
デザインが変わったの?
加藤
え?
村上
どうして赤い服から、その、灰色の、スウェットみたいな服に変わったの?
加藤
やよい?
岸田
そのー…、動きやすさを重視して、あのー、軽快な、配布を、プレゼントの軽快な配布を
行えるようにと。あとは、まあ、財政難もあったもんやから。
村上
財政難?
岸田
その、スウェーデンの。
加藤
いや、お前の財政難だろ? お前は、お前の財政難により、その毛玉だらけのスウェットを
着てるんだろ?
岸田
いや、スウェーデンの。
加藤
お前のだろ。
岸田
スウェーデンの。
加藤
こいつ、空き巣だよ。
村上
あなた、サンタクロースじゃないの?
加藤
え、やよい、こいつがサンタクロースの可能性を追うの?
村上
だって、サンタクロースなんて、はじめて会ったから。
加藤
いや、
村上
あたしの家、サンタクロースが来たことないの、卓巳君も知ってるでしょ?
枕元にプレゼントが置いてあったこともない。あたしんち、貧乏だったし、そういうの、
してくれない家庭だったから。
加藤
うん。
村上
だから、サンタクロースかもしれないんだったら、あたしは、少しでもその可能性を
信じたいし、サンタクロースだったらいいなって、思ってるよ。
加藤
おい。
岸田
はい。
加藤
お前、俺の彼女、こういう、いい子なんだよ。
岸田
はい。
加藤
切ない背景を持つ、いい子なんだよ。
岸田
うん。
加藤
それでもお前、やるのか?
岸田
え?
加藤
サンタクロースでお前、やっていくんだな?
岸田
はい。
村上
今日は、どうやってここに?
岸田
総武線で。
村上
総武線?
岸田
いや。
加藤
なんだお前。
岸田
あのー、トナカイで。
村上
総武線って、電車?
岸田
いや、総武線っていう、トナカイで。オスの総武線と、メスの井の頭線で。
真っ赤なお鼻の。トナカイさん。いつもみんなの笑いもの。
加藤
お前だよ。
村上
トナカイはどこに?
岸田
今、表の駐車場に。
村上
見てもいいですか?
岸田
あかんよ。
村上
どうして?
岸田
そんなん、姿を見られたらあかんっていうのが、あの、ルールやから。
今ここでこうしているのも、あとでごっつ怒られるから。
村上
誰に怒られるの?
岸田
あのー、スウェーデンに。
村上
スウェーデンの、誰?
岸田
スウェーデンや。
村上
サンタさんは、子どもにプレゼントするんじゃないの?
岸田
うん。
村上
あたし、子どもじゃないけど。
岸田
でも、ほら、さっき、その、家庭の事情で、な。プレゼントがもらえなかったと。
それはあかんやないかと、スウェーデンで話になったんや。
加藤
お前スウェーデン万能じゃねえぞ。
岸田
せやから、こうしてプレゼントをお届けにあがった次第です。ほっほっほ。
村上
え、でも、じゃあなんで子どもの頃は来てくれなかったんですか?
岸田
なんですか?
村上
子どもの頃に、普通に、来てくれたらよかったじゃないですか。
岸田
うーん。
加藤
がんばれサンタ。
村上
なんで子どもの頃に来てくれなかったんですか?
岸田
いや、行ってたは行ってた思うけどね。
村上
え?
岸田
行ってたは行ってたんちゃうかな、普通に。
村上
プレゼントは?
岸田
プレゼントも、まあ、置いてたは置いてたやろ。
村上
え、でもあたし、見たことないよ。
岸田
あれちゃいますかね。両親があれしてたんちゃいますかね。
加藤
ええ?
岸田
やっぱりこう、貧乏ってこともあって、ね。こっそり。
加藤
ええ……?
村上
そうなの?
岸田
そうなんちゃいますかね。
加藤
いやいや、やよいちゃん、違うよ。やよいちゃんのご両親、そんな人じゃないよ。
こいつ、なんてこと言うんだよ。サンタクロースじゃないよ。
村上
サンタクロースじゃないのかな。
加藤
残念だけど、こいつは、犯罪者だよ。
村上
サンタクロースじゃ、ないんですか?
岸田
まあ、サンタクロースやと思ってれば、サンタクロースなんちゃいますかね。そこはもう、
信じる人を相手にやってることですから。そんなんもう、あれですよ。
ガンガン来られても、ね。逆に、こっちかて、そこまでサンタクロースだってことを
証明する義理もないというか。そこはもう、ほなさいならですわ。
加藤
お前マジで最低だな。
村上
今日、プレゼントは?
岸田
はい?
村上
プレゼント、持ってきてくれたんじゃないの?
岸田
まあ、はい。
村上
どこ?
加藤
いや、もう、手ぶらだもん。
岸田
いや。
加藤
ないんだろ? プレゼント。
岸田
いや、ありますけどね。サンタクロースなんで。
加藤
ねえだろ。
岸田
いや、サンタクロースなんで、ありますけどね。
加藤
どこにだよ。
岸田
今はちょっと、表のトナカイのとこに置いてきてもうたけど。
加藤
なんで置いちゃってんだよ。じゃあ何しに入ってきたんだよ。手ぶらで。
それはもうお前、サンタクロースだとしても怖えよ。
岸田
ほな取ってくるがな。
加藤
ダメだよ、お前逃げるだろ。
村上
……サンタクロースじゃないんだね。
村上、泣き始める。
加藤
やよい。
村上
ううん、大丈夫、卓巳君。そりゃそうだよね。だけど、サンタクロースだったら
いいなって、思っちゃって。そんなわけないのにね。ごめんね。
加藤
……お前、ちょっとこっちに来い。
岸田
え。
加藤、岸田に小声で、
加藤
タンスの裏に、プレゼントがあるから。
岸田
は?
加藤
俺が用意した、サンタクロースからのプレゼントだよ。
岸田
え、くれんの?
加藤
なんでだよ。
岸田
俺、空き巣やし。
加藤
犯罪者が!
岸田
きよしこの夜に家おる思わんがな。
加藤
早くそれ取って、やよいに渡してやってくれ。
岸田、タンスの裏を探って、プレゼントを見つける。
岸田
あった。
加藤
渡してやってくれ。見逃してやるから。
村上
(鼻をすすっている)
岸田
ほっほっほ。やよいちゃん。
村上
え?
岸田
ほっほっほ。プレゼントだよ。
村上
ほんとに?
岸田
ほっほっほ。驚かせてごめんねぇ。
加藤
ほら、やよい、良かったな。サンタさん、来てくれたな。
パトカーのサイレンが聞こえる。
加藤
あ、警察だ。
岸田
え、やば。
村上
サンタさん、ありがとう。
岸田
うん、ほな、サンタのおっちゃん帰るわ。
加藤
ダメだよお前。
岸田
なんでやねん、ええやろ!
加藤
おい、逃げるなよ!
岸田
いや、サンタクロースやったやんけ、なんやねん! 見逃してくれや!
岸田、窓から逃げる。ツリーの装飾が体に引っかかる。
岸田
ああ、もう、鈴が身体にひっかかる!
加藤
シャンシャンうるせえな!
岸田
おりゃあ!
岸田、窓から飛び降り、シャンシャンと走り去る。
加藤
あ、おまわりさん! あの人です! あの人、捕まえてください!
村上
卓巳君。あの人、サンタクロースじゃないの?
加藤
あのー、おまわりさん! あの人、……サンタクロースなんで!
あのサンタクロースを、捕まえてください!
鈴が遠くなっていく。
END