クリスマススペシャル2003
“クリスマスの贈り物”
2話(2003年12月23日 ON AIR)
「サンタ」
作/上田誠
出演 原尚子(立身出世劇場)
  腹筋善之介

     部屋。
     男女、話している。

それにしてもさあ、気前いいよなあ。
ああ、サンタ?
うん、サンタ。だってさあ、プレゼントくれんねんで?
あー。
しかも、見ず知らずの子供に。
まあ、確かに、かなりきっぷのよさはあるよなあ。
あるよ。
こう、太っ腹っていうか。
うん。しかも、世界中の子供にやで。
あー。
全世界の子供一人一人に、おもちゃとか、お菓子とか……。
こう、そこそこ値がはるやつをな。
うん。もう、分けへだてなく、あげるっていう。
あー。……そう考えたら、確かに、めっちゃ気前のいいオッサンやなあ。
やろ?もうだから、「足長おじさん」やね。世界的な。
ああ、こう世界の子供たちの、パトロンみたいな。
うんうん。
メディチ家みたいな。
うん……それは分からんけど、でも、すごいよなあ。
しかも、さらにすごいのは、そんだけ色々プレゼントしといて、それの見返りを一切、求めへんっていう。
あー。
もう、あげるオンリーっていう。
そっか。向こう、一切得せえへんもんなあ。
もう、こっちはただ、ありがたくもらうだけやから。なかなかないよ?こんな世知辛い世の中に。
普通なにかしらこう、取引があるもんなあ。
ギブアンドテイクの、テイクが成立してへんから。
ギブだけや。
うん。しかもその、ギブした子供の笑顔すら、見ようとせえへんから。
あー。こう、プレゼント置いて、すぐ帰るっていう。
煙突からな。で、朝おきたら、プレゼントだけが、朝日に輝いてるっていう。
あー。じゃあもう、めっちゃええ人やなあ。
もうめちゃめちゃええ人。もうだから、完全なる善意?
あー、ボランティア。
うん、もう子供が喜ぶのを想像するだけで、オールOKみたいな。こっちはもう、ノーリスクハイリターンやから。
うんうん。
年に一度の、歳末ジャンボやから。
で、しかもそれを、身銭切ってんねんもんなあ。
あー、うんうん。
世界中の子供らの分を、全部自分で出してるっていう。
もう、マイナスを一手に引き受けてな。もうだから、そういう意味では、キリストやな。
うん……キリスト?
こう、ありとあらゆる罪を、一人で背負うみたいな。原罪を。
あー……、まあ何となく分かるけど。
うん。聖人やな。聖なる夜にふさわしいよ。
で、なおかつ、そういう苦労を、一切外には感じさせへんっていう。
こう、あくまで太っ腹に振舞ってな。
うん。粋やなー。
粋やわ。めっちゃいなせ。
うーん。
もうだからあれやな。考えうる、最高の人格やな。セイント・クロース……。
うん、だけど、おらへんねんな。
せやねん。
架空の人物やねんな。
うん。いたらどれほど素敵かと思いきや、存在せえへんねん。
うん。
実在せえへんねん。悲しいかな。
っていうか、親やねんな。
(笑って)そうやねん。
サンタの正体は。
あのごっついすばらしい人格その裏は、うちの親やねん。
うん。
だからあれやな。結局その、世界中の親が、結託して作り上げた、虚像?
うんうん。
めっちゃ夢のないこと言ってるけど。
こう、子供に夢を与えるために、
こう、親同士で示し合せて作った、理想の人物みたいな。
うんうん。
善意の象徴みたいな。(感心して)そういうことやねんな。
ほんで、それがこうじゃあ、親から子に、受け継がれていくっていう。
あーこう、世代交代してな。
うん、だまされる側からだます側にこう、シフトしていくっていう。
循環してな。(感心して)ようできてるなー。
うーん。
ものすご巧妙なシステムやな。そやねん、そういうことやねん。あの赤い服の下は、そういうからくりになってんねん。
うん。サンタの中身は。
うん。ほんで、さらに言うと、その秘密を知ることが、大人への階段になってんねん。
あーその、赤い服の下をのぞくことが、
こう、割礼みたいな。
あー。(笑って)暴いたなー。
暴いたよ。めちゃめちゃ暴いたよ。
もう、赤裸々に暴いたな。
うん。だって、おかしいもん。そんなプラスのみをもたらしてくれる存在なんて、ありえへんもん。
ふつう、どっかでマイナスが付きまとうもんな。
うん。それはだから、すべての親が、ちょっとづつ負担してんねん。こう、子供に夢を与えるために。
うん。……あんた、いつ気づいたん?
ああ、俺?
うん。サンタがそうやって、いいひんってこと。
俺は……確か小学校1.2年ぐらいの時かなあ。当時、ビックリマンって、流行ってたやん。
あの、シールのやつ。
うんうん。俺あれめっちゃ集めてて。それで、クリスマスの時に、こう、親から「今年はサンタさんから何ほしい?」みたいなこと聞かれて、「ビックリマン全種類」って答えてん。そしたら、親が、慌てて。
(笑って)あー。
リクエストしたら、なぜか親が狼狽してん。でまあ、そのときに、「ああ、サンタっていうのは、こういうことか」っていう。
気づいたんや。
システムの片鱗が垣間見えた、みたいな。お前は?
私は、かなりショックやったんやけど。
おお。
幼稚園ぐらいのときかなあ。クリスマスで、サンタさんが来るっていうから、すごい、緊張しててんな。
うんうん。
ほんでもまあ、夜は何とか、寝れたんやけど、夜中、なんか気配を感じて、パッて目がさめてん。
おお。
そしたらこう、ドアに向かって歩いていく、お父さんの後ろ姿が。
うわあ。
こう気づかれんようにそおっと。
それはショックやなあ。
今だに思い出すもん。
こう、忍び足で。
うん、しかも結構大またで。
あー。
その工夫も、なんか悲しいしさあ。
それは気をつけんとあかんなあ。
うん。トラウマになるから。
うーん。……そろそろええかな。
ああ……もう、寝てるんちゃう?
ああ。
12時やし。
よし。……ほな、行こか。
うん。

     男、立ち上がる。

まだ秘密を知る歳ではないからな。
気をつけてな。
おお。
……っていうか、大丈夫?
大丈夫やって。
私いこか?
何でやねん。俺行くわ。
だってなんか危なっかしいし。
大丈夫やっちゅうねん。っていうかサンタは男やから。
関係ないやん。見られへんねんから。
いやいや、俺が行きたいねん。
私だって行きたいよ。
俺がサンタやねん。
ずるいー。2人でいこか。
いやいや。成功率下がるやろ。
だって。

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