ラヴィーナ STORY FOR TWO
クリスマススペシャル2009
“あると思います?!物語”

第3話(2009年12月23日 ON AIR)
鶴の誉れ(つるのほまれ)

作 /大正まろん

登場人物  
男1 タケゾノ(両足骨折・27歳くらい) 堀江勇気(尼崎ロマンポルノ)
男2 ナカイ(鼻骨を骨折・24歳くらい) 大木湖南
男3 オギノ(あばら骨折・関西弁 一番年上) 腹筋善之介
女1 看護師 平野舞
 

 

そこは病院の一室。
時刻は夕飯と消灯のちょうど真ん中付近。

   
男1

バナナぁ?

男2

はい。

男1

バナナってなんだよ。

男2

タケゾノさん知らないんだ。バナナは白血球を増やすから怪我にいいんだよ。

男1

知るかボケ。

男2

じゃあ、覚えておきましょー。

男1

こんなもん肴にして酒が飲めるか。

男2

お酒は体に負担をかけるでしょ、だからちょっとでも負担を軽減しなきゃと思って。

男1

じゃ、飲むな。

男2

え。

男1

お前は、バナナ食って寝ろ。

男2

そんなぁ・・・。

男3

なになに、なにモメてんの?

男1

なんもしゃべんなよ。

男3

今晩飲むんやろ。・・・そのクリスマスパーティ、ボクも混ぜて欲しいな。

男2

聞こえてたみたい。

男3

あたりまえやん。このベッドを仕切ってんのは、ただのカーテンでっせ、まる聞こえやっちゅうねん。

男1

オギノさん面会の人が来て、談話室に行ってたはずでしょ。

男3

おう。

男1

やだなあ、忍び足で戻ってくるなんて。

男3

そんなんするかいな。自分らの声が大きすぎやねん。

男2

あ、あの面会に来た人、オギノさんの奥さんですか。

男3

まあ、ね。

男2

すげえ・・・。

男1

なに?

男2

いや、かなりの美人。

男1

マジ?

男3

一応、ボクと結婚するまで、飛行機乗ってたしな。

男2

客室乗務員ってやつ。

男3

そうそ。

男2

奥さんに、後輩とか、紹介してもらえないですかね。

男3

いや、それはどやろ。

男2

後輩が無理なら、同僚でも。

男1

俺も俺も。次、奥さんいつ来るんですか。

男3

ええと、いつかなぁ。

男2

タケゾノさん、オギノさんも仲間に入れましょ。

男1

え。

男2

いいじゃない。ね。

男3

せやせや。自分らなにをコソコソもくろんでんのん。

男2

幻の酒ですよ。

男3

なんかワクワクする響き。

男1

お前口軽すぎ。

男2

いや、でも客室乗務員さんとお友達になれるかもしれないんだし。

男3

どんなんなん幻の酒って、もったいぶらんと教えてーや。

男2

洒落になんないくらいのプレミアもんらしいんですよ。

男1

いいですか、ここにこの酒があると知れた途端、全国からバイヤーが押し寄せて大変なことになる。

男3

俺はな「ダイヤモンドのオギちゃん」て言われてんねや。

男1

は?

男3

それほど口がカタイっちゅうことや。

男1

絶対嘘だ。

男2

僕は「アサリのナカちゃん」て言われてます。

男3

お湯をかけたら、口開きよるってか。

男2

へい。

男1

やっぱ誰にも言うんじゃなかった。

男2

なに言ってんですか。動けないタケゾノさんに代わって、
バナナを買ってきてあげたでしょ。

男1

だから、こんな貴重な酒の肴がバナナって、ありえねーだろ。

男2

じゃあ、もっかい行ってきますよ。

男1

スーパー、もう閉店した。

男2

駅前のコンビニに、

男1

先週ツブレタ。・・・お前なんか豆腐の角に頭ぶつけて死んじまえ。

男2

豆腐の角に頭をぶつけたって死にませんよーだ。

男1

ふぬぬぬぬ(憤懣やるかたない感じ)・・・。

男3

タケちゃんのその気持ち、わかる。最初からボクに相談してくれたらよかったのに。

男1

タケちゃんて。

男3

ボク、この病院の裏手の居酒屋のマスターと顔見知りやから、美味しい肴用意したる、任せとき。

男1

ほ、ほんとに?

男3

ひらめのこぶじめとか。

男1と2

おお。

男3

厚揚げ焼いたんに生姜の擦ったんのせて、おしょうゆをひと回し。

男1と2

うんうん。

男3

えいひれ。

男1と2

いいねえ。

男3

きのこのホウバ味噌焼き、ってなもんもあるで。

男1と2

素敵、しびれちゃう!!

男3

な、せやから、その日本酒の顔、拝ましてんか。

男1

(ベッドの脇の冷蔵庫へ手を伸ばし)・・・伝説の米「鶴の舞(ツルノマイ)」を復活させ、これまた幻の名水を仕込み水に使用。そうして出来上がった純米大吟醸を、贅沢にも三年も熟成させ、蔵出しした「鶴の誉れ(ツルノホマレ)」。世に出たその数なんと、

男3

なんと?

男1

10本。

男3

たった10本。

男1

ここに1/10(10分の1)って手書きで入ってるでしょ。10本中の1番目に瓶詰めされたって証拠です。これが正真正銘、幻の酒「鶴の誉れ」です。

男2

すげえ!!

男1

その芳醇な味と、馥郁(ふくいく)たる香りは、一口味わえば10年寿命が延びると言われている。

男3

後光が差したある。

   
 

そこへナースの女1が入ってくる。

   
女1

モリさーん、お呼びになりました~?

男1

ゲ、

男2

やばい、

男3

シッ、

女1

何やってんですか三人そろって。

男1

えと、あれだよ。

男3

そう、あれあれ。

女1

あれって?

男2

実は、

男1と3

おい~!!

女1

イブだからって、三人でどっかに飲みにいったりしちゃダメですよ。

男3

まさか、ボクら入院中やし。

女1

オギノさん、時々、病院の裏の小平治で飲んでるでしょ。

男3

人違いやろ。

女1

今日は開いてないですよ。

男1

え?

男3

店開いてないん?

女1

ってやっぱり行くつもりだったんだ。

男1

どうなの!?

女1

(その剣幕に一瞬たじろぎ)えと、開けない。マスター、私と食事に行くから。

男1

へ?

女1

小平治のマスターと私、付き合ってるから。

男3

それで情報が漏れてたんか・・・。

男1

カオルちゃん、彼氏、居たんだ。

女1

そりゃ私だって、

男2

清純派で売りだし中だったのに。

女1

誰も何も売りだしたりしてません。

男3

なあ、モリのじいさんがお呼びやったんちゃうん。

女1

ほんとだ。モリさーんごめんねー。

   
 

と女はモリさんのベッドへ。

   
男1

ああ、ここに居たい理由が、今夜一つ消えていった。

男2

いいじゃないですか。僕らのには、飛行機の天使が舞い降りてきますから。ねオギノさーん。

男3

そのことやねんけどな。

男1

ほんっと、本気ですから。セッティングしてくださいよ。

男3

これ、見てくれ。

男1

なんですか。

男2

離婚、届け。

男1

奥さんのサイン入り。

男3

ボクが悪いねや。仕事や言うて嘘ついて、いや、実際取引先の人らと一緒やったんやけどもな。内緒で南国リゾートしに行ったわけや。んでジェットスキーに乗ってて転倒したん。大丈夫や思てたんやけど、あんまり痛あて、日本帰ってきて検査したら、アバラが三本も折れてて、即入院ちゅうことになって・・・。

男2

じゃあ奥さん、これを渡しに?

男3

めっさ怒っとった。許してもらえるんかわからん・・・。

男2

友達紹介しろなんて言えるわけないか。

男1

あーあ。

男3

すまんな。

男2

しょうがないです。今夜は三人で、(小声で)いい酒に癒されましょう。

男1

今夜は無理だって。

男2

え?

男3

せやな肴も手に入らへんし。

男2

だめだめ。ボク明日、退院しちゃうんですよ。

男1

へえ。

男2

今夜が最後なんです。病院最後の、夜。

男1

知るか。バナナなんか買ってきたお前が悪い。

男2

そんなぁ・・・。

   
 

シャーっ!と勢い良く、女1の手によって間仕切りカーテンが開く。

   
女1

今夜、マスターに頼んで小平治を開けてもらいましょう。

男3

カオルちゃん、今、なんて言うた?

女1

話は全てモリさんから聞いたわ。

男1

全て?

女1

もの凄く貴重なお酒を隠し持ってるそうね。

男2

モリさん、今アゴを固定してるから喋れないでしょ。

女1

筆談で。

男3

全部、聞かれてたんか。

女1

壁に耳あり、隣に爺さんありじゃ、って。

男2

あらららら。

女1

消灯後、皆でこっそり行きましょ。小平治で、美味しい肴を作ってもらうから。

男1

皆って何人?

男2

ボク、タケゾノさん、オギノさん、カオルちゃん、モリさんで、五人。

女1

小平治のマスター入れて、六人。

男1

これ720mlしかないんだよ。

女1

一人、100ml以上は飲める。

男1

そんなちょっとしか飲めないの・・・。

男3

カオルちゃん、そんな酒好きやったっけ?

女1

いい酒は体で覚えるしかない。これマスターの口癖。私、あの人に追い付きたい。
追い付いて、一緒にお店を手伝いたい。

男2

私は、その酒を飲んで、寿命を少しでも延ばしたい。タケゾノさんよろしゅうたのんます。

男1

え?

男2

ってモリさんが、書いてます。

男1

モリさーん、例えですよ、それくらい美味いって例えですから。

男3

例えかしらんけど、そんな貴重なもん、ちょっとでも御相伴にあずかれたら、こっから先の人生、なんかイケそうな気がするやん。

男2

俺も同感です。

男1

・・・この酒は、怪我をした僕を、なんとか元気付けたいって、プレゼントしてくれたもんなのに。

男3

その怪我を負わせた人からの見舞ちゅうことなんか?

男2

怪我の代償?

男1

いや、この怪我はアスレチックで一人で転んでやっちゃって。その時、助けてくれた人が、ここの酒蔵の人だったんです。

女1

それなら、やっぱりみんなで分かち合わないと。

男2

そうそう。

男3

ぱあっと行こうや、ぱあっと。

男1

そう、ですね。そうしましょうか。つうかそうする他ないっていうか。

女1

あれ・・・。

男2

なんです?

女1

ドアの外。なんか人だかりがしてない?

   
終わってまた始まる
   
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