ラヴィーナ STORY FOR TWO
クリスマススペシャル2000
“イブ~4つの恋”

第2話(2000年12月24日 ON AIR)

「お茶の間の恋」
作/花田明子

出演/ 大谷  吉村吉純(維新派)
  坂井  平野 舞
 
  坂井家のリビングルーム。
クリスマスイヴのパーティー。
  始まりはオーブンの音。
坂井 おお、できたできた?
大谷 こら、待て待て坂井。
坂井 えー、まだなの?
大谷 うーんと、
  オーブンを開ける大谷。
大谷 ああっと、もうちょっとだな。
坂井 うーんこの匂い。
大谷 だろ?だからもう少し。
坂井 おう。
大谷 よし、坂井よ。皿出しといてくれ。
坂井 はいな。
  食器を出す音。
坂井 (食器を出しながら)いやあ、鶏のももなんて久々だなあ。
大谷 あ、そうなの?
坂井 うん、まことと二人だからさ。だからたいてい唐揚げとかにしてる。
大谷 え、クリスマスなのに?
坂井 うん。
大谷 夢ないなあ。
坂井 そうかな。
大谷 そうだよ。だってやっぱりクリスマスって言うのはこれっしょ。
坂井 そんなもんかな。
大谷 そんなもんですよ。
坂井 やっぱアルミホイルで巻いたりするの?
大谷 あたりき。じゃーん。
坂井 わあ、何これ。
大谷 ただアルミホイル巻いただけなんて芸がないだろ?だからつくってきたんですよ。オリジナル鶏ももペーパー。
坂井 ねえ、もしかしてこれクリスマスにちなんで赤と緑?
大谷 そう。で、それだけだと地味だから、結び目に金の糸で縛ってある。
坂井 ああ、何とこまかい。
大谷 職人と呼んで下さい。
坂井 うん、いい仕事してますな。
大谷 まあ、自分でもこんなにもよく気がつく家庭的な男もおらんと思う。
坂井 料理も上手いしね。
大谷 おう。
坂井 このポテトサラダなんかプロだよ、プロ。
大谷 いやポテトサラダは誰が作っても大して変わらんさ。
坂井 ううん、でもツナでしょ?コーンでしょ?
大谷 それにたまねぎに。
坂井 え、これたまねぎは入ってたの?
大谷 入ってるよ。
坂井 じゃあダメだ。
大谷 何で。
坂井 まことたまねぎ全然ダメなのよ。
大谷 いやこれは大丈夫だよ。
坂井 ううん。ダメよ。
大谷 いや実はさっきまことに試食してもらって大丈夫だった。
坂井 本当?
大谷 うん。実はこのたまねぎは水に三時間つけてあったんだ。
坂井 え、三時間?
大谷 そう。ここに来るまでにね。
坂井 え、でも大谷君、会社から直接来たんじゃない。
大谷 実は会社でつけておいた。
坂井 おいおい。
大谷 それくらい気合が入ってるんだ。
坂井 へーえ。
大谷 いや俺イベントには力を入れる方なんだ。
坂井 ああ、私と正反対。
大谷 そうなの?
坂井 うん。誕生日とかわざわざ祝うって言うのがおかしな気がする。
大谷 うん・・・・・。
坂井 ・・・。
  ちょっとの間
大谷 いや、俺坂井に言わなかったけ?
坂井 何?
大谷 俺、小さい頃から料理当番だったんだよ。
坂井 おお、うん。
大谷 共働きでね。
坂井 看護婦さんだっけ、お母さん?
大谷 そ。父親が塾の教師。
坂井 うん。
大谷 だからやれ母親が夜勤だ、父親が夕方から仕事に行くわで、洗濯も掃除も食事も俺がやること多くてさ。
坂井 ふーん。何か・・・。
大谷 いやおかげで今はこの通りだろ?
坂井 うん、でもさ。
大谷 いや、もちろん俺もそれが嫌だった時期もあったよ。
坂井 うん。
大谷 他の家は母親が雑巾縫ったりして、名前も縫い取りしてあったりするのに、何で俺だけ自分でぬってんだろとかさ。
坂井 うん。
大谷 でも他の家と比べてもしょうがないからさ。
坂井 うん、でもさ。
大谷 いや、それがさ。幸せだったのはさ、うちには伝言ノートってのがあったのさ。
坂井 伝言ノート?
大谷 そう。ハンバーグ、おいしかった。前に食べたときよりしっとりしていましたが、何か違うんですか?
坂井 うん。
大谷 母親から。それで次の朝、僕はそこに返事を書くわけさ。前よりたくさんこねました。それとつなぎのパン粉を生のパンをちぎっていれてみました。
坂井 へーえ。
大谷 話せば三分ですむ話なのにさ。
坂井 うん。
大谷 でも文字にするとあれ、長いのな。
坂井 ああ。でもいいじゃない。
大谷 さあ、どうだったんだろうなってさ。
坂井 ・・・え?
大谷 だって本当なら生の声で顔が見えた方がずっと楽しいだろう?
坂井 ああ・・・。
大谷 だからないよりあった方がよかったろうと思う。
坂井 うん・・・。
大谷 思うけど、猛烈に寂しかったなあ。
坂井 ・・・。
大谷 余計寂しくてさあ。
坂井 ・・・うん。
大谷 同じ場所に住んでて、手紙書きあってる。
坂井 ・・・。
大谷 気付いたんだ、と思って嬉しい。俺も返事を書く。コール&レスポンス。
坂井 ・・・うん。
大谷 けどそこには時間を共有したって記憶がない。
坂井 ・・・。
 
大谷 そのせいなんだよ。
坂井 え?
大谷 いやイベントね。
坂井 うん。
大谷 せっかくなんだから目一杯やろうって思う、共有できる時間があるなら目一杯楽しみたいな・・・なんてな。
坂井 うん・・・。
大谷 ・・・何か暗い話になっちゃったな。
坂井 ううん。
大谷 いや、まあ、そんなこんなのメリークリスマスだ。
坂井 はい。
大谷 メリークリスマス、坂井。
坂井 はい。
大谷 ほら、お前も言え。
坂井 え、恥ずかしいよ。
大谷 うん、でもいいじゃん。恥ずかしかったねって、来年のクリスマスにまた話ができれば。
坂井 ・・・。
大谷 ほら。
坂井 ・・・。
大谷 ほら。
坂井 ・・・。
大谷 うん?どうした?
坂井 ううん。来年は私もまことも大谷になってるんだなって思ってさ。
大谷 まあな。そんな改めて言われると俺も困るが。
坂井 うん・・・。
大谷 何嫌なのか。
坂井 何でよ。
大谷 いやだって、
坂井 去年は、まことと二人のクリスマスだったなあと思ってさ。
大谷 ああ。
坂井 そう言えば今年は三人なんだなって。
大谷 今年からね。
坂井 ああ・・・うん。
大谷 よし、この話はもうやめだ。
坂井 え?
大谷 何かものすごく気恥ずかしくなってきた。
坂井 何で。
大谷 いや、やめよう。
坂井 どうして。
大谷 やめてくれ。
坂井 何でメリークリスマスなんてなことが平気で言える人が、こういう話がダメなのよ。
大谷 いいだろ?人それぞれなんだ。
坂井 いやでもさ。
坂井 いいだろ。あああ!
  と、坂井がお皿を三枚出してるのを見て、
大谷 おい、坂井、何で三枚なんだ?
坂井 え?
大谷 皿だよ、皿皿。
坂井 ちょっとごまかして。
大谷 いやそうじゃないそうじゃなくてだな。
坂井 何。
大谷 いや何で三枚も出してるんだ。
坂井 何でってだって三人でしょ。
大谷 いや、一つに盛らんと。
坂井 何で。
大谷 だって三人で一緒に食うだろう?だから。
坂井 そういうことははずかしげもなく言えるのにね。
大谷 何?
  と、オーブンがピーと音をたてた。
大谷 おお。
坂井 あ、できた。
大谷 よし。後はまことだな。
坂井 うん。あれ、あの子遅いなあ。
大谷 ああ。何買いに行ったの?
坂井 うん、味の素。
大谷 何?
坂井 いやだから味の素だよ。
大谷 何でそんなもん買いに行ったんだ?
坂井 何でって切れてたから。
大谷 でも今日はいらんぞ。なのに何でわざわざ。
坂井 まあ、あの子なりに気遣ったんじゃないの?
大谷 何?
坂井 いただからさ。
大谷 いや、いや、分かってる。それは分かったみなまで言うな。
坂井 何でそういうことは照れるのよ?
大谷 仕方ないだろう。そういう構造なんだから。
坂井 おかしな構造ねえ。
大谷 あのねえ。
坂井 ああ、それにしてもちょっと遅いか。
大谷 ああ・・・俺見て来るわ。
  と、玄関のドアが開く音。
坂井 あ、帰って来た。
大谷 おう。
  大谷、玄関に走って行く。
大谷 お帰り、まこと。メリークリスマス。
まこと ・・・。
大谷 こらこら、にやって笑うなよまこと。メリークリスマス。
大谷 いや、うんじゃなくて。
坂井 さあ、さあ、早く冷めないうちに食べようよ。まこと、手洗ってきな。
  まこと、洗面所へ走って行く。
大谷 なあ、なあそれはないだろう?
坂井 何をおっしゃる、人それぞれだよ、大谷君。
大谷 いやいやでもさ。
坂井 メリークリスマス。
大谷 (にやりと笑う)
坂井 こらこら黙ってにやっと笑いなさんな。


おしまい。
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