ラヴィーナ&メゾン STORY FOR TWO クリスマススペシャル2007
「終わらないクリスマス物語」
第4話(2007年12月23日 ON AIR)
「ダンスダンスダンス」

作・ごまのはえ

キャスト 坂口修一
  原 尚子
  店員 腹筋善之介
  朗読 平野 舞

  
 

シーン① 六月

  
朗読

そのマンションはバスを下りてすぐのところにあった。マンションの下はコンビニになっていた。男は何か買っていこうと思った。緊張していたからだ。季節は六月。お風呂上りに食べるような、それでいて夜に食べても太らないような。男はヨーグルトを二つ買うことにした。

店員

(元気に)ありがとうございました。

  
 

コンビニの店を出るときの音。

  
  
 

シーン② 彼女の部屋。

  
  
 



  

あ、ヨーグルト食べよっか。

うん。

  
 

女は台所に向かう。

  

下のコンビニすごい元気な店員さんいたよ。

白石くん。

シラハシ?

  
 

女は寝室に帰ってくる。

  

白石くん。最近はいってん。大学生、たぶん。

へー。

朗読

こうして二人は付き合い始めた。でも互いに好きだと告白はしなかった。女は男に横顔しか見せなかった。男は年上の女性と付き合うのは初めてだった。そして二ヶ月が過ぎた。

  
 

シーン③ 8月

  
店員

(少し投げやりに)ありがとございまったー。

  
 

コンビニの店を出る音。
彼女の寝室。

  
  
 



  

ヨーグルト食べる。

うん。

  
 

女は台所に向かう。

  

いつからここに住んでるの。

4月。

前はどこに住んでたの?

  
 

女は寝室に帰ってくる。

  

ごめんクーラー切っていい。

うん。

  
 

クーラーを切る音。

  

いつもヨーグルトやな。

うん。

前は滋賀に住んでた。

へー。

そこあけよっか。

うん。

  
 

ベランダの戸を開ける。部屋の前の道路には車がいっぱい走っている。

  

知ってた?

え?

私、タバコ吸うから。

へー。

朗読

女はベランダにでてタバコを吸った。ほとんど裸だった。男は慌てて部屋の電気をけし、Tシャツを着てヨーグルトを食べた。そしてまた2ヶ月が過ぎた。

  
 

シーン④ 10月

  
店員

(かなり投げやりに)ありがございまたー

  
 

コンビニの店を出る音。
彼女の寝室。

  
  
 



  

ヨーグルト取ってくる。

うん。

  
 

女は台所に向かう。

  

白石くん。だいぶ馴れてきたな。

え?

白石くん下のコンビニの。

  
 

女は寝室に帰ってくる。

  

あぁ。

今度の日曜さ、空いてる?

え?

近代美術館、藤田嗣治やって。

だれそれ?

けっこう面白いと思うよ。

日曜。

  
 

女の携帯がなる。

  

ごめん。

朗読

女はベランダにでた。男はヨーグルトを食べた。閉められたベランダの戸の向こうから女の電話する声がかすかに聞こえた。

(電話に向かって)わかってる。ママ日曜日には帰るから、パパと一緒に運動会いくから、うん。お弁当作っていくから、大丈夫…。

朗読

そして秋は過ぎ、冬がやってきた。

  
 

シーン⑤ 11月

  
店員

(やる気なく)ありがしだんー。

  
 

コンビニの店を出る音。
女の寝室。

  
  
 



  

…ごめん。

え?

…ごめん。

どうしたん?

いや、…スコーンとした気持になれない。

スコーン?

いや違う。何やろ…、

気持ちよくないの?

いや。…ごめん。

ヨーグルト食べる?

うん。

  
 

女は台所に向かう。
戻ってくる。

  

これってセフレやんな。

え…。

セフレはさ、クリスマスどうしたらいいんやろ。

……。

別に調べたわけじゃないけど、わかるよ。結婚してるんやろ。別居してるだけなんやろ。

もう別れたって。

うそ。

ほんま。

ほんま?

ほんま。

朗読

二人は約束をした。クリスマスイブは二人で過ごそうって。レストランを予約しようって。11月の初め、そろそろマフラーが必要な季節だった。

  
 

シーン⑥ クリスマスイブ。

  
  
 

クリスマスイブ。男は女のマンションの下に立っている。

  
朗読

待ち合わせた場所に彼女は来なかった。電話をしても圏外だった。男はマンションに向かったが、部屋には明かりもなく、すでに彼女は引っ越した後だった。手紙でもないかと郵便受けを探したが、それらしいものはまるでない。男はそこを立ち去ることが出来なかった。火をつけてやろうかと思ったが、それは犯罪だった。

(涙声で)人妻なんて…大嫌いだ!

朗読

男は道端に倒れこんだ。涙がとめどなく流れた。マンションの下のコンビニから出てくる人たちが男を怪しげなものを見るかのように避けて通る。

店員

あ、ダンス。

  
 

コンビニの店を出る音。

  
店員

あ、ダンス。

  
 

コンビニの店を出る音。

  
店員

あ、ダンス。

  
 

コンビニの店を出る音。

  

「あ、ダンス」????

朗読

それは白石くんの声だった。彼の「ありがとうございました」はこの半年間で「あ、ダンス」にまで成長していたのだ。

あ、ダンス。あ、ダンス…。そう、ダンス!

朗読

雪が降り始めた。男は踊り始めた。幸せだったじゃないか。そう自分に言いきかせて…

  
  
おわり
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