ラヴィーナ&メゾン STORY FOR TWO クリスマススペシャル2013
“クリスマス マジック”
第2話(2013年12月23日 ON AIR)
「花子」

作・ピンク地底人3号

キャスト 腹筋善之介
  写真家 田所草子(テノヒラサイズ)
  花子(女・赤ん坊) 平野 舞
  警官 クールキャッツ高杉(イッパイアンテナ)
  花屋 平野 舞
  
 

写真撮影のスタジオ。
男と写真家がいる。

  

お疲れ。

写真家

お疲れー。眠たいでしょう?

写真家ってこんな遅くまで仕事すんの?

写真家

まーねー。徹夜なんてしょっちゅうよ。どう参考になった?

ああ。

写真家

傑作書けそう?

どうかな。

写真家

書いてよ傑作。それでさ。友人であるSに捧げるみたいなさ。
よく海外の小説であるじゃんか。あれ、やってよ。

本当に?恥ずかしいだろ?

写真家

全然。むしろ歓迎。

オッケー。考えておくよ・・・それでさ。さっきの撮影で使った花ってどうすんの?

写真家

あーあれ?ほしいの?あんた、そんな趣味あったっけ?

いや、なんか小説のネタになるかもしれないし。

写真家

いいよ。持って帰りなよ。どうせ捨てるんだし。

  

家に帰り、俺はもらった花を空になったビールの空き缶に挿した後、眠りについた。
次の日、目が覚めると身体いっぱいに缶を抱えた赤ん坊がいる。

  
  
 

赤ん坊の泣き声。

男は写真家に電話をかける。

  

もしもし。俺。

写真家

おーお疲れ。もう書けたのか?

まさか。あのさ。聞きたいことがあんだけど。

写真家

何よ。私の武勇伝でも聞きたいの?

違う違う。おまえの家の子供、いくつになった?

写真家

え?今、五歳だけど。

ふぅん・・・あのさ、赤ん坊が泣き止まないんだけどどうしたらいい?

写真家

赤ん坊?え?今、あんたのとこにいるわけ?

ちょっと色々あって預かることになってさ。

写真家

なんで扱いもわからないあんたに預けるんだよ。

だから色々あったんだよ。

写真家

あんた、まさかどっかから盗んできたんじゃないでしょうね?

違うから。とにかく泣き止ます方法を教えてくれ。うるせーんだ。

写真家

お腹が減ってんのよ。ミルクでも飲ませてりゃいいよ。

  

さっそく俺はコンビニで粉ミルクと哺乳瓶を買ってきて飲ませようとしたが
一向に飲むそぶりを見せない。泣き声は激しくなるばかりである。

  

これじゃないのか?

赤ん坊

だぁだぁ。

え?

赤ん坊

だぁだぁ。

え?これ?

赤ん坊

だぁだぁ!

  
 

男は再び写真家に電話をかける。

  

もしもし。

写真家

もう。今度はなによ。

赤ん坊にビール飲ませていいか?

写真家

・・・あんた、私のことおちょくってんのか?いいわけないでしょ。
私も忙しいのよ。馬鹿。切るね。

  
 

電話が切れる。

  

飲むか。ビール。

赤ん坊

だぁだぁ。だぁだぁ。

  

次の日、目が覚めると隣で裸の女が眠っている。

  

ねぇ。タバコ。

・・・んん(目がまだ覚めていない)

どこ?

冷蔵庫の上。

  
 

女はベッドから出る。

  

今日は小説、書けそう?

・・・どうかな。

あんた、小説家だろ?小説家が小説書かなくてどうすんだよ。

おまえ、代わりに書いてくれるか?

書くかよ。

・・・なぁ。おまえ、誰だっけ?

花子。

・・・へぇ。

ねぇ。ビールは?

冷蔵庫に入ってるよ。

もうないよ。

あるよ。昨日補充したばっかだし。

全部飲んだ。

・・・はぁ?

お金頂戴。ビール買ってくる。

  

その夜、交番から電話がかかってきたので俺は花子を迎えにいく。

  
警官

あんた、この人の恋人?

・・・はい。

はいじゃねぇーよ。

警官

大変だね。

・・・まぁ。

警官

今回は店のオーナーが許してくれたけど、
例え酔っぱらっていたとしても次、飲み逃げしたら逮捕だからね。

はい。すいませんでした。おい。おまえも謝れよ。

うるせー。

警官

おい。あんた、酔っ払いって口の悪くなる女は最低だぞ。

おい。あんた、酔っ払いの女に説教する警官は最低だぞ。
それからうちのことをいやらしい目で見ないでくれるかな?痴漢でしょっぴくぞ。

  
 

帰り道。

  

金は?渡したろ?

全部使った。

使ったなら帰ってこいよ。それ以上飲むな。

うるせー。

・・・

小説、書けたのかよ?

  

次の日、編集者との打ち合わせが終わり、家に帰るとベッドには裸の警官と花子がいる。

  

(警官に)あんた、何してんの?

警官

・・・いやぁ。

花子

見たらわかんじゃん。

警官

(花子に)おい。あんた、帰ってこないって言ったじゃないか。

花子

そうだっけ?覚えてない。どーでもいいじゃん。続きしようよ。

おい。やるならよそでやれよ。

花子

やだ。(警官に)おい。ちょっと何、服着てんだよ。

警官

帰らせてもらう。

花子

まだ終わってねーから。

  
 

警官は出ていく。

  

おまえも出てくか?

花子

あの男の続きしてよ。

するかよ。

花子

すっきりしたら小説、書けるかもよ?どうせ今日も書けないんでしょ?

  

次の日も、次の日も花子は部屋に男を連れ込む。俺はもう何も言わなくなる。
そして週に一度は必ず交番へ行き、花子を迎えに行く。

  

おまえ、何がしたいの?

花子

別に何も。あー帰るのめんどくさくなってきた。

  
 

花子は道路にへたり込む。

  

おい。そんなとこにヘタリ込むな。置いてくぞ。

花子

おんぶ。

あ?

花子

もう歩けない。

・・・ほら。

  
 

男は花子を背負う。

  

おまえ、めちゃくちゃ軽いな。

花子

うるせー。

おまえ、息くせーよ。

花子

うるせーうるせーうるせーうるせー。

おい。昨日臨時収入、入ったんだ。なんかほしいもんあるか?

花子

ビール、ワイン、焼酎、タバコ。

それ以外。

花子

ない。なーんもない。

  

その晩、花子は俺の背中にゲロを吐く。俺は二度とあいつを背負わない。

  
花子

何これ?

香水。おまえ、酒くせーから。

花子

いらねーから。

・・・まぁそう言うと思った。

花子

じゃあこんなもんよこすな。タバコのカートンよこせ。

次の日、家に帰ると誰もいない。ベッドからは男の汗と俺があげた香水の匂いがする。
花子がうちにきてからあっという間に一か月が過ぎると、彼女は急激に衰えていく。
張りのあった彼女の肌はあっという間に皺くちゃになり、髪の毛の艶は失われる。
真っ白だった肌は黄ばみ、どす黒いシミが彼女の全身を覆っていく。

花子

ビール。

花子。 飲みすぎだよ。

花子

タバコ。

花子。吸いすぎだよ。

花子

ビール。タバコ。ビール。タバコ。     

花子。俺のこと、わかるか?

花子

・・・ビール、よこせよ。

  

そして冬がやってきた。
早朝、机の上でビールの空き缶に刺さったまま、彼女は枯れていた
俺は彼女を缶に押し込みゴミ箱に捨てる。収集車がやってくる。花子とさよならをした。

  
  
 

電話が鳴る。

  
写真家

おい、小説読んだよ。

おお。

写真家

全然私出てこないじゃん。

出てきただろう。最初の方で。

写真家

あれだけ?

  

一年後、俺は街の雑踏の中で、花子の後ろ姿を見かけた。花子は花屋へ入っていく。

  
花屋

いらっしゃいませー。

・・・

花屋

何かお探しですか?

・・・

花屋

ああ。これ?綺麗な花でしょ?

・・・はい。

花屋

贈り物ですか?

・・・まぁ。

花屋

どれにします?

  

俺はもう花子の顔が思い出せない。

  
  
終わり