1201話(2019年4月6日 ON AIR)

「失くした恋の見つけ方」

作・福谷圭佑
出演・大熊隆太郎
のたにかな子
夜景の見える静かな丘。
虫の声。あるいは感傷的な音楽。
二人は、まるで別れ話のように。
わざわざ来てもらったのに。ごめん。
もう、本当に、……ないんだ?
ごめん。
ねぇ、最後にさ、順番に、思い出してみない?
……うん。
初めて出会ったのは、大学の、掲示板の前だったよね。
時間割を眺めてて。そのときは、大人しそうな子だなって思って。
あのとき、シンペイはヒロくんと一緒にいたよね?
そう。サオリはたしか、マコちゃんと一緒にいた。
で、ヒロくんとマコちゃんはもう友達になってたから。
それで、なんとなく、その四人で話すようになって。
いつからだっけ。あたしのこと、サオリって呼ぶようになったの。
最初は「山本さん」だったけど、ヒロもマコちゃんもサオリって呼んでたから、
いつの間にか、僕もサオリって呼ぶようになって。
あたしがシンペイって呼ぶようになったのは……、
それは覚えてる。初めて二人で飲んだとき。
え、学生通りの焼き鳥屋さん?
そう。あのとき、少し酔ったサオリが、急に、シンペイって。
思ってたよりも、よく喋るし、よく笑うし、それに、よく食べるし。
それで、いい子だなって思って。
また誘ってくれたんだよね?
今度は、デートのつもりで。
あたしも、男の子と二人で水族館に行くのなんて初めてで。
正直、ずっと緊張してて。
マンボウを見て、二人でやっと笑ったのを覚えてる。
それで、次のデートで告白しようって決めて。
その決意に気がつきながら、あたしは、すました顔してて。
コクリコ坂を観た帰り、駅のホームで告白したんだ。
そしたらちょうど、電車が通過してね。
「ごめん、なんて?」って言われて。
あはは。
それからの毎日は、ずっと楽しくて。
いろんなところに、二人で出かけて。
男、涙声になり始める。
大学を卒業して、就職もして。
目の前の景色がどんどん変わって、それでもサオリが、隣にいて。
うん。
これからもずっと一緒にいたいと思ったから。
うん。
今度は、電車にかき消されないように。
素敵な夜景の見える丘に。
誘ったんだけど。でも、もう…。
うん。
忘れないように、玄関の靴箱の上に置いてあったんだ。
うん。
出かける前に、服を着替えて、胸ポケットにしまって、靴を履いて。
うん。
靴を履いたときに胸ポケットから落っことして。
うん?
ここじゃ危ないから、絶対に落とさないところに入れて持っていこうと思って。
うん!
トッ、トッ、トランク! ああ、トランクだ! トランクに入れて、迎えに来たんだ!
男、車のトランクを開ける。
なくしてたもの、見つかった?
うん。
トランクを閉めると、一切の音がやんでいる。
……静かだね。
結婚してください。
END