1219話(2019年8月10日 ON AIR)

「夫婦の休日」

作・嘉納みなこ
出演・のたにかな子
藤井颯太郎
神戸市北区にある賃貸マンション。ベルが鳴る。
はーい。
宅急便です。
はーい。
ガチャっと扉が開く音。
サインお願いします。
はーい。
・・・きれいな手ですね。
そうですか?
よく手入れされている・・・。
夫はそんなこと言ってくれません・・・。
奥さん!
あっ、何をなさいます!
いいじゃないですか!
扉の閉まる音。
奥さん!
なあ、もう、やめへん?
・・・奥さん!
もうやめよって。
・・・もう!!!いい感じやったのに!!
ごめんって。
ごめんじゃないで?僕がこの日のためにどれだけ用意してきたか。
ネットで配達員っぽい帽子を買い、ブルゾンを買い・・・!
この伝票だってほんもんやもんね。
そうやで!それもこれもマンネリ化した夫婦生活をなんとかしようとする、
僕なりのソリューションやんか!
そうなんやけどお。
何があかんねや!!配達員と人妻の何が!!
なんか・・・先がないというか・・・。
先?
この後、どうなんの?
えっ。
配達員と奥さん、どうなんの?
えっ。だから、その、関係を持つよね。古風に言えばね。
それで?
えっ?
その後どうなんの?愛が芽生えるんかな。
えっと・・・。
あのな、私の中のキャラ設定ではこの奥さんは、長年夫にはあんまり相手にされてへんねん。
だからすごく愛されることを求めてる。だから、配達員の情熱に心が動いてしまうねん。
うんうん。
配達員は、どうなんかな?奥さんには本気になんの?
え、そこまで考えてへんかったな。
なんで考えへんの!
ごめんなさい。
ゆうくん、私はな、火遊びとかそんなん、苦手なタイプやねん。真剣な恋愛じゃないと、
燃えられへんわ。たとえこんなお遊び企画でも。
ここちゃん。
ごめん、わがままな女で。
いいねん。
ごめん、合わせることのできない女で。
いいねん。そういうここちゃんやから、僕は好きになったんや!
ゆうくん!
わかったで。僕、もっと配達員のディテール詰めるわ。
私も洋子の気持ちをもっと考えてみる。・・・洋子って、奥さんの名前。
わかってるで。
あつかましいお願いなんやけど、夫役、やってもらわれへん?その方が洋子の気持ちを
もっと深められる気がするねん。
名前は、何にする?
じゃあ、篤史(あつし)で。
かしこまりました。
あなた、今日も遅いの?
しょうがないだろう。仕事なんだから。
あなた、もう私を愛してないの・・・?
お前のような地味な女は飽き飽きだよ。
あなた。
放してくれ。今から新地に行ってくる!
あなたああ!!
玄関のベルが鳴る。女、インターホン越しに、
はーい。
宅急便です。
はーい。
はっ。待って、ここちゃん!!今のここちゃん、出るの危険!! ・・・ここちゃん、
なんで配達員の人に恋する目になってんの!ここちゃん、戻ってきて!!
終わり。